「解放新聞」(2023.11.25-3083)
49年前のきょう、東京高裁の寺尾正二裁判長は、無実の石川一雄さんに無期懲役判決をおこなった。この不当有罪判決が、石川さんにいまも「みえない手錠」をかけている。第3次再審請求で弁護団は267点の新証拠を提出し、この有罪判決の誤りを明らかにし、狭山事件の再審を開始するよう求めている。
寺尾判決は、脅迫状と石川さんの筆跡が一致するとして有罪証拠の主軸としたが、証拠開示された取調べ録音テープを分析した識字能力鑑定によって、当時の石川さんが部落差別によって文字を奪われた非識字者であり、脅迫状を書けなかったことが明らかになった。警察官らも石川さんが脅迫状の字が書けないことをわかっていたことも取調べの録音で明らかになった。「漫画雑誌から漢字を拾い出して書いた」「テレビを見て『刑』の字は知っていた」などとした寺尾判決は誤りだったのだ。コンピュータによる最新の筆跡鑑定も提出され、石川さんが脅迫状を書いた犯人ではないことは科学的、客観的に明らかになっている。
寺尾判決は、被害者の万年筆が自白通り石川さんの家から発見されたとして有罪の証拠としたが、蛍光X線分析で万年筆インクの元素を調べた鑑定によって、この発見万年筆は被害者のものとはいえないことが科学的に明らかになった。
証拠の万年筆は、10数人の警察官が家宅捜索を2回おこなった後の3回目の捜索で、高さがわずか176センチのお勝手入口のカモイから発見された。寺尾裁判長は弁護団が求めた現場検証を却下し、判決で「カモイは背の低い人には見えにくいから見落とした」と決めつけて発見経過の不自然さをごまかしたが、第3次再審請求で、心理学者が捜索の実験をおこない、寺尾判決の誤りを明らかにする鑑定を提出した。コンピュータを使って取調べ録音を分析した鑑定で、警察官の誘導によって作られたウソの自白であることも明らかになった。
弁護団は、昨年8月、東京高裁第4刑事部に事実取調請求書を提出し、これらの新証拠を作成した11人の鑑定人の証人尋問と万年筆のインク資料の鑑定の実施を求めた。これらの鑑定人は、それぞれ科学者や元科捜研技官など、専門家として、寺尾判決があげた有罪証拠の誤りを明らかにしている。公平・公正に再審請求を審理するために鑑定人尋問とインクの鑑定は不可欠だ。東京高裁第4刑事部に事実調べを求める署名はこれまでに51万筆以上提出されている。これら多くの市民の声を受けとめ、東京高裁第4刑事部が鑑定人尋問とインク鑑定をおこない、狭山事件の再審を開始するよう強く求める。
再審開始決定に対する検察官による抗告を禁止し、再審における証拠開示を保障する法改正も急務だ。袴田さんの再審をはじめ、この間の冤罪の教訓をふまえ、わたしたちは、再審法改正を強く国会に求める。
袴田事件の再審公判が始まった。袴田事件の再審請求では東京高裁が鑑定人尋問をおこない、検察官のみそ漬け実験の結果を裁判長が直接確認し、再審を開始する決定をおこなった。つぎは狭山再審だ!東京高裁第4刑事部の裁判官も、インクの鑑定を実施し、インクの違いを直接確認すべきだ。石川さんも袴田さんも無実だ!再審開始と無罪判決にむけてともに闘おう。すべての冤罪犠牲者や支援運動と連帯し、冤罪根絶にむけた司法改革、再審法改正を実現する闘いを全力ですすめよう。事実調べを求める署名をさらにひろげよう!
石川さんの「みえない手錠」をはずすまで全力でとりくもう!
2023年10月31日
狭山事件の再審を求める市民集会 参加者一同
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