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NEWS & 主張

【寄稿】 第11回アイヌ感謝祭を終えて 〜心をひとつにしてつくる交流を
チャシ アン カラの会 代表 島田あけみ

「解放新聞」(2024.01.25-3089)

ニュージーランドの先住民族マオリのパフォーマンス・グループ「ナ・ファ・エ・ファ」がハカ(力強い踊り)などを披露した(2023年11月25日・横浜市)

ニュージーランドの先住民族マオリのパフォーマンス・グループ「ナ・ファ・エ・ファ」がハカ(力強い踊り)などを披露した(2023年11月25日・横浜市)

熱い気持ちが活動の支えに

 第11回アイヌ感謝祭が昨年11月25日に無事終わりました。例年のようにたくさんのお客様に来ていただきました。部落解放同盟からも、地元の神奈川県連の皆さんをはじめとして多数が来場くださいました。こうした部落解放同盟の皆さんの熱いお気持ちが私の支えになっています。本当にありがとうございました。
 回を重ねるごとに磨かれていくアイヌの歌と踊り、ムックリとトンコリ演奏。それに加えて、首都圏アイヌの長老格、弓野恵子さんが優しいアイヌ語で語りかけ、歌ってくれた素朴でしみじみとしたヤエサマ(そのときどきの思いを歌いこんでいく即興歌)は、かつてのアイヌの暮らしぶりを懐かしい調べにのせて伝えてくれました。首都圏アイヌの文化伝承が先輩から若い世代へと引き継がれ、着実に根を広げているように思いました。先輩アイヌの存在感と若い世代のアイヌのエネルギーを頼もしく思いました。そして、子どもたちがのびのびと元気に舞台を飛び回る姿にアイヌの未来を感じました。私たちの先祖が苦難の歴史のなかでも私たちに大切な文化を残してくれたように、私たちもこの子どもたちにアイヌの文化をしっかりと手渡していかなければと責任の重さを感じました。

世界の先住民族とつながり

オーストラリアの先住民族の音楽器ディジュリドゥの演奏も

オーストラリアの先住民族の音楽器ディジュリドゥの演奏も

 狩猟を通じてアイヌの伝統を復活させようと精力的な活動を続け、狩猟を通して世界の先住民族とつながりたいと話された門別徳司さんの熱い思い、アイヌがあるべき姿を求めて地道な活動を続ける沖津翼さんのアイヌ権利推進運動の現状―当初は一部のアイヌによる漁業権訴訟としてはじまったが、それをアイヌ全体の問題として捉えるには、アイヌが自分たちの権利について考え、忌憚(きたん)なく話し合い、そして立ち上がる環境づくりが必要だという訴えと、大国に抑圧されているベラルーシの出身で、ベラルーシ語の復興にとりくみながらアイヌ復興を支援しているツァゲールニック・タッチャナさんのアイヌ親子合宿によるアイヌ語学習のとりくみなど、それぞれ異なる視点からのお話がありましたが、私たちアイヌのいまとあるべき未来の姿について大きな示唆を与えてくれました。
 アイヌに関心を持ち、私たちと交流を続けている国際的な美術作家の奈良美智さんの台湾原住民のお話、そして、井上隆広さんによる、ムックリと同じ倍音楽器であるオーストラリア先住民族のディジュリドゥの演奏は、アイヌ民族が世界の先住民族とつながっていることを教えてくれました。
 そして、なによりもうれしかったのは、アオテアロア(ニュージーランド)の先住民族マオリのパフォーマンス・グルーブ「ナ・ファ・エ・ファ」(四つの風)が14人という大きなグループで参加してくれたことです。その家族10人も観客席にいました。家族連れで来てくれたことがとてもうれしかったです。ワイアタ(歌)、ハカ(力強い踊り)、ポイ(紐のついたお手玉のような球をぐるぐる回しながらの踊り)で会場の熱気は最高潮に達しました。
 いまのアイヌの状況はマオリ復興運動が始まったころのようだとマオリの人たちはいいます。「アイヌ施策推進法」が制定され、「ウポポイ」がオープンしたことは、確かに一歩前進かもしれません。しかし、こうした政策がアイヌ復興の道につながるのかどうか、私たちは慎重に見極めなければなりません。沖津さんがいうように、アイヌ同士で自由に意見を言い合い、方向性を見いだしていくことができる環境、アイヌがアイヌとして生き生きと生きることができるコミュニティが必要です。それは人からつくってもらうものではなく、アイヌみずからが自分の手でつくっていくものだと私は思います。

自分たちの手でつくる意味

 チャシ アン カラというアイヌ語の意味、「自分たちの手でつくる砦、活動の場」という意味をかみしめて、前にすすんでいきたいと思います。
 皆さんのご支援で年々幹を大きくしているアイヌ感謝祭という場も、この会がめざす首都圏アイヌの集いの場づくりと並んで、もうひとつのチャシ アン カラです。皆さんとアイヌが心をひとつにしてつくり上げる交流という大切な活動の場だと私は思います。これまでに変わらぬご支援をいただきますようにお願いします。

 本当にイャイライケレ(ありがとう)。

出演者らが一緒に記念撮影

出演者らが一緒に記念撮影

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