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「戦争をする国」づくりを許さず力を合わせて闘い抜こう

「解放新聞」(2024.02.05-3091)

 昨年12月22日、政府与党は武器輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」を閣議決定で、その「運用指針」を国家安全保障会議(NSC)で決定し、改定した。これは2022年の「安保関連3文書」改定と同様の手法であり、国民的議論どころか国会審議すらおこなわずに、日本の安全保障・防衛政策の根幹を一方的に決定したことに断固抗議する。岸田首相は、「国民に丁寧な説明をしていく」とくり返しのべているが、内閣支持率の低迷が示すように、説明が不十分だと言わざるを得ない。

 「防衛装備移転三原則」とは、1967年に佐藤内閣が打ち出した、共産圏諸国や紛争当事国などへの武器輸出を認めないとする「武器輸出三原則」が始まりだ。そして1976年には三木内閣が「三原則ではない地域についても輸出を慎む」とし、実質的にすべての輸出を禁止した。しかし1983年の中曽根内閣では、例外的措置としてアメリカへの武器技術の供与を認める決定をした。それ以降、迎撃ミサイルの日米共同開発や国連平和維持活動(PKO)活動に従事する他国軍への銃弾の提供など、個別案件ごとに例外的な措置として輸出を認めてきた。2013年に国連南スーダン派遣団に参加する韓国軍にたいし、国連の要請で例外措置として自衛隊から銃弾の供給がおこなわれたが、大きく転換したのは2014年の安倍内閣だ。このとき、新たに「防衛装備移転三原則」と「運用指針」を決定し、他国と共同開発・生産したものを除いて、完成した装備品を輸出できるのは、平和貢献や国際協力、日本の安全保障に役立つ場合(救難・輸送・警戒・監視・掃海)に限り、厳格な審査のもとで輸出を判断していくとした。たしかに、殺傷能力のある完成品を輸出したことはなく、フィリピンへの警戒管制レーダー移転の1件だけだった。

 しかし今回の「防衛装備移転三原則」改定では、「官民一体となって防衛装備の海外移転を進める」方針をうち出し、外国企業から技術を導入して国内で製造する「ライセンス生産」について、ライセンス元の国に完成品を輸出できるようにした。これによって、ライセンス生産しているF15戦闘機や砲弾など、殺傷能力や建造物破壊能力がある完成品を輸出できることになった。これにもとづき政府与党はアメリカからの要請によって、地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」の完成品を輸出することを決定した。NSCの審議では「米軍の在庫を補完することは、日本とインド太平洋地域の平和と安定に寄与する」としているが、これは逆に、日本が米国の武器製造・保管国となり、東アジアの軍事的緊張感を高めるだけで、「専守防衛は変わらない」「先制攻撃は許されない」と主張しても相手国が信じるわけがない。いまこそ、平和主義の理想を掲げる日本国憲法第9条で謳(うた)われた「戦争放棄」「戦力不保持」「交戦権の否認」を明確に示すべきだ。

 政府は2024年度の一般会計総額112兆717億円の予算案を閣議決定した。このうち防衛費は7兆9172億円と前年度から1兆1292億円増となっている。岸田政権が22年に閣議決定した「安保関連3文書」改定を受けて、防衛力の抜本的強化のために、23年度から27年度の5年間の防衛費を43兆円と決めたことをふまえた増額だ。段階的に増額し、27年には8兆9000億円とする計画だ。5年間の武器強化総事業費のおもな内訳として、政府が「反撃能力」と称している「敵基地攻撃能力」(米国製巡航ミサイル「トマホーク」など)のスタンド・オフ防衛能力として5兆円、弾道ミサイルなどの探知から追尾をおこなうレーダーや迎撃ミサイルの発射管制をおこなう、イージス・システム搭載艦の整備に3兆円、無人アセット防衛能力の、ミサイル搭載型、自爆型ドローンの取得として1兆円、宇宙やサイバー、電磁波といった新領域での能力と陸海空の能力を融合させる領域横断作戦能力として8兆円としている。43兆円という額は、社会保障費と文教・科学振興費の1年分を合わせた額と同等であり、防衛費の金額ありきの予算建ては言語道断だ。また、一般会計の財源の3割を超える約35兆円を新規国債の発行でまかなう計画であり、火の車と言わざるを得ない財政状況のなか、次世代への負担先送りを少しでも減らすとともに、安心して暮らせる社会を引き継ぐためにも、武器増強をすすめる「安保関連3文書」改定の撤回を求めていかなければならない。

 昨年12月1日、「核兵器禁止条約」第2回締約国会議が「核のリスクが高まる中でも核なき世界に向けた取り組みを続ける」とする政治宣言を採択し閉幕した。政治宣言では、「核兵器の近代化や世界情勢の緊張の高まりで、核のリスクはいっそう悪化している」としたうえで、ロシアによるウクライナ軍事侵攻での核の威嚇などを懸念し、「核による威嚇は、国際法に違反し世界の平和と安全を損なうだけだ」と非難している。さらに「核抑止論の正当化は核の拡散のリスクを危険なほど高めている」として、各国にそうした政策を放棄し、「核兵器禁止条約」に加わるようよびかけている。そして「人類にとって危険な転換点で、世界が核の破局に近づく兆候を見過ごすことはできない。現在と未来の世代のために、核なき世界の実現に向けたゆまぬ努力を続ける」としている。今回の締約国会議には、59か国と地域のほかにアメリカの核の傘のもとにある北大西洋条約機構(NATO)のドイツやベルギーを含む35か国がオブザーバー参加したが、日本政府は、第1回締約国会議に続き「核保有国が参加しておらず、その道筋もみえていない」として不参加だった。唯一の戦争被爆国である日本だからこそ、核兵器廃絶への旗振り役となり、核兵器保有国と非保有国との橋渡し役として「核兵器禁止条約」を批准する責務がある。まずは締約国会議へのオブザーバー参加と、核軍縮に向けた実効あるとりくみを強く要求する。

 敗戦から79年となる今年、日本は着実に「戦争ができる国」へと向かっている。いまこそ、「平和主義」(憲法第9条)、「基本的人権の尊重」(憲法第11条)、「個人の尊厳」(憲法第13条)、「生存権」(憲法第25条)が保障されるよう、平和と人権、民主主義と共生など、日本国憲法の理念に立ち返るべきときである。

 私たちには第2次世界大戦の教訓をふまえ、集団的自衛権への道をひらいた2014年7月の閣議決定をはじめ、2022年に改定された「安保3文書」を撤回させ、平和といのちと人権が守られる日本社会を建設させる責任がある。戦争する国づくりをすすめ、新自由主義路線にもとづき貧困と格差を拡大する自公政権に抗し、立憲主義と平和憲法を守り、人権・平和・民主主義の確立をめざし、すべての市民と連帯して闘い抜こう。

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