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戦争する国づくりを許さず、人権・平和・民主主義の闘いを

「解放新聞」(2024.04.25-3099)

 岸田首相は3月17日の自民党大会で、「ロシアの侵略開始から2年が経つウクライナ、アフリカをはじめとする世界各地の食料不安やエネルギー問題、不透明な中東情勢とガザ地区の人道状況、核兵器の開発や使用をめぐる言動が不安を煽っています。東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、北朝鮮による核・ミサイルの脅威も増大しています」と国際情勢を語り、「世界中で争いの火種がくすぶる中で、我が国の安全を断固守りぬくとともに、世界の平和に責任を果たしていかなくてはなりません」と決意をのべた。また、「国民の命と我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、5年間で43兆円の防衛力整備の水準を確保し、防衛力の抜本的強化、倍増を決定いたしました。同盟国、同志国との連携も更に強化していきます」と自身がすすめてきた安全保障政策の実績を正当だと評価するとともに方針を表明した。そして、「党是である憲法改正について、総裁任期中に実現するとの思いの下、今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります」と、あらためて早期の「憲法改正」に向けた強い姿勢を示した。自民党改憲草案のとおりに「憲法改正」されれば、敗戦から79年にわたり積みあげてきた平和と人権確立のとりくみがなし崩しになることは必至であり、断じて見過ごすことはできない。

 1945年9月2日、日本政府による降伏文書への調印がおこなわれ正式に敗戦が決まった。10月にはマッカーサーGHQ最高司令官が幣原(しではら)総理大臣に憲法の自由主義化の必要性を示し、翌年2月に日本政府はGHQに「憲法改正要綱」を提出したが受け入れられず、GHQから草案が提示された。GHQ草案では、①天皇は国の元首②国家の主権的権利としての戦争を廃止、紛争解決・事故の安全を保持するための戦争も放棄③封建制度の廃止の三原則が概要として挙げられた。これを受け日本政府は憲法改正草案の作成に着手、3月にGHQに提出し、4月に公表した。衆議院、貴族院で可決し11月3日、「日本国憲法」が公布され1947年5月3日に施行された。敗戦から2年もかからずに「国民主権」、「民主主義」「基本的人権の尊重」、「平和主義」、「三権分立」など、国家権力の抑止・制限と国民の保護を盛り込んだ憲法が施行までたどり着けたのは、日本が戦争を仕掛けたことへの反省からだろう。

 しかし2012年4月に、自民党が「国防軍の保持」、「緊急事態条項の新設」などを盛り込んだ「憲法改正草案」を発表したことを機に、平和主義がおびやかされる流れに転換した。同年12月に発足した第3次安倍政権は、国家安全保障会議(NSC)の創設、「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」の改定、「武器輸出三原則」の見直し、安保情報保全のための「特定秘密保護法」の制定を強行した。その集大成として15年9月19日、野党、法学者、市民が反対の声をあげるなか、集団的自衛権の行使を容認する「安全保障関連法」を強行採決で成立させた。これは、日本国憲法が定める「平和主義」をないがしろにし、「民主主義」を無視した愚行であり断じて許してはならない。

 「安全保障関連法」は、海外で自衛隊が他国軍を後方支援する「国際平和支援法」を新たに設置し、「自衛隊法」や「PKO協力法」、「周辺事態安全確保法」を「改正」した「重要影響事態安全確保法」など10の法律をまとめた「平和安全法制整備法」で構成された法律だ。おもな内容は、「武力攻撃事態対処法」で集団的自衛権を認め、「PKO協力法」で自衛隊の活動範囲や使用できる武器を拡大、「重要影響事態安全確保法」でアメリカ軍や他国軍への弾薬提供や兵士輸送などの後方支援が地球規模で可能としている。そして「海上輸送規制法」で外国の武器などの海上輸送を可能とし、「米軍等行動関連措置法」で支援対象をアメリカ軍以外にも拡大している。さらに「自衛隊法」で在外邦人の救出や米艦防護を可能とし、武器使用基準を緩和、上官に従わない場合の処罰規定を追加した。こうした「平和主義」を守るために制定・施行された多くの法律を「改正」し、戦争や紛争に介入できる土台をつくりあげた安倍政権とそれをひき継いでいる岸田政権に、これ以上、平和を守るための政治を任せることはできない。

 岸田政権は22年12月、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の「安保関連3文書」を閣議決定した。「国家安全保障戦略」は外交・防衛方針を定め、「国家防衛戦略」は防衛力の水準を規定、「防衛力整備計画」は5年間の防衛費の総額や主要装備の数量を定める日本の安全保障に関わる重要な文書だ。

 このなかでとくに問題なのは、敵の弾道ミサイル攻撃に対処するため、発射基地などを攻撃する「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を明記したことだ。これは、憲法や国際法の範囲内でおこなわれるとしているが、実際には先制攻撃とみなされる可能性が高く、専守防衛の原則を逸脱する。

 つぎに、防衛費を5年間で43兆円程度に増額する計画だ。これは、GDP比で2%に相当する規模であり、日本の防衛費は過去最高水準になる。

 さらに、昨年12月には、武器輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」を閣議決定で、その運用指針を国家安全保障会議(NSC)で改定した。今回の「防衛装備移転三原則」改定では、「官民一体となって防衛装備の海外移転を進める」方針を打ち出し、外国企業から技術を導入して国内で製造する「ライセンス生産」について、ライセンス元の国に完成品を輸出できるようにした。これによって、ライセンス生産しているF15戦闘機や砲弾など、殺傷能力や建造物などを破壊する能力がある完成品を輸出できることになった。これは日本が米国の武器製造・保管国となり、東アジアの軍事的緊張感を高めるだけで、「専守防衛は変わらない」「先制攻撃は許されない」と主張しても相手国が信じるわけがない。

 このような重大な決定を、選挙で国民の信を問うこともなく、国会での審議も十分におこなわずに強行したことは断じて許すことはできない。ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナの戦争が続き、在シリアのイラン大使館が空爆を受け、イランがイスラエルにたいして無人機による報復攻撃を実施するなど、第3次世界大戦の危機が迫るなか、軍備拡大よりも世界的な平和外交が求められている。

 安倍、菅政権をひき継いだ岸田政権は、戦争をする国へと向かう改憲をもくろみ、格差拡大と貧困化をすすめるアベノミクスなどの政策をひき継ぎ、立憲主義に反する政治を続けている。

 私たちは、戦争への道を突きすすむ岸田政権の暴挙を阻止するために「戦争をさせない1000人委員会」と連携し、「集団的自衛権」の行使容認の阻止や「戦争法」(「安全保障関連法」)廃止の闘いにとりくみ、「総がかり行動実行委員会」は、毎月19日行動や、戦争法にたいする抗議行動・集会、違憲訴訟支援のとりくみを広範囲な人々を巻き込みながらとりくんできた。

 また、憲法記念日の5月3日には、「武力で平和はつくれない!とりもどそう憲法いかす政治を2024第10回憲法大集会」(東京・有明防災公園)への大結集をよびかけており、全国各地でも同様のとりくみが準備されている。

 戦争する国づくりをすすめ、新自由主義路線にもとづき貧困と格差を拡大する岸田政権と対決し、立憲主義と平和憲法を守り、人権、平和、民主主義の確立をめざし、すべての市民と連帯して闘い抜こう。

 

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