「解放新聞」(2024.05.25-3102)
【大阪】 各地の被差別部落に入り込んで撮影した写真に地名を明示し、説明文をつけてネット上に公開してきた「部落探訪」(「人権探訪」をへて現在は「曲輪クエスト」に改称)にたいし昨年11月6日、大阪府連富田林支部の男性が削除を求め、大阪地裁への仮処分を申し立てた。これにたいし5月1日、大阪地裁第1民事部(井上直哉・裁判長)は、鳥取ループ・示現舎に写真・記事の削除を命じた。さらに、削除対象の記事・写真の「ウェブサイトへの掲載、書籍としての出版、出版物への掲載等の一切の方法による公表」も禁じた。「部落探訪」削除を求めた全国初の申し立てにたいし、削除を命じた初の仮処分決定は、あとに続く埼玉・新潟の裁判にとっても大きな意味をもつ。
今回の仮処分決定を受けて5月7日、大阪地裁内で弁護団と申立人の男性が記者会見をひらいた。南和行・弁護士は、今回の決定が、昨年6月28日の「全国部落調査」復刻版出版事件裁判控訴審判決に依拠して、いまも根強い差別があることを認定し、「部落探訪」が「差別的な扱いを受けるおそれなく平穏な生活を送る(中略)人格的な利益を侵害する」と認めたこと、申立人である男性の自宅写真だけでなく当該地域の写真全体の削除を求めたことを高く評価した。ネットで差別を煽(あお)る情報発信者にたいし責任をとらせる、差別に真正面から向き合う決定だとした。申立人の男性は「私の自宅から撮影を始め、墓石を写して執拗(しつよう)に名字をさらしたり、路上駐車を部落特有であるかに書き立てたりされた。普遍的な踏み込んだ決定で、うれしい。ただ、同じ写真・記事が有料サイトで公表されてもいる。同じことのくり返しになるとしても、差別は許さない」と思いをのべた。赤井隆史・大阪府連委員長は「地区外に住む人も差別を受けるのではと恐れている。府内全体の記事削除にもはずみがつく」と評価。中井雅人・弁護士は「「差別されない権利」を改めて認めた、別の申立人でも普遍性のある決定であり、当事者の立ちあがりが難しいなか国や自治体の役割に期待したい」と今後についてのべた。
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