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第51回部落解放文学賞に積極的に応募しよう

「解放新聞」(2024.08.25-3111)

 一昨年に全国水平社創立100周年を迎え、1974年に反差別と人権確立への貢献をめざし「部落解放文学賞」を創設して、「水平社宣言」の半分の歴史を重ねてきたことになる。今年、第50回を迎えた部落解放文学賞には多くの作品が寄せられ、入賞作が生まれた。

 大衆運動としての文化運動の弱まりが心配される今日にあって、部落解放文学賞の存在と意義は大きなものがあり、今後も長く発展させていかなければならない、と部落解放文学賞実行委員会の鎌田慧・代表はつねに提起されている。

 新型コロナは昨年5月の5類感染症移行後、感染の把握が難しくなったが、変異と感染拡大を続けている。

 さらに、ロシアによるウクライナへの攻撃が始まって2年以上、目を覆いたくなるような深刻な状況が続いている。これにとどまらず、パレスチナ・ガザ地区へのイスラエルの攻撃も、昨年10月から終息の見通しがない。病院や学校を狙い、病人や子どもの死傷者を大勢出していることで国際的にも非難を浴びている。

 米国では大統領選をめぐる演説の最中、トランプ前大統領が銃撃され、暴力はとどまるところを知らない。

 敗戦から79年、8月6日には広島で平和記念式典、9日には長崎で平和祈念式典がおこなわれた。各国代表が出席した式典で広島選出の岸田首相からは、世界で唯一の戦争被爆国である日本を代表しての核廃絶宣言は残念なことになされなかった。

 「人権の世紀」といわれる21世紀に、世界中が紛争をなくそうと努力を積みあげながらも、悲しむべき事件や歴史に逆行するような事態に直面している私たちは、その背景を冷静に深く考察する必要があると考える。

 そうした意味でも、部落差別をはじめあらゆる差別の撤廃に向け、反戦・平和と反差別・人権確立の立場から創作に励む人々がめざしてきた部落解放文学賞の重要性は、ますます高まっている。

 「水平社宣言」の崇高な精神のもとに脈々と続いてきた識字の営みや、光の当たらない場所で培われてきた反差別の思いをさまざまな形で残してきたことは、ほかにはない素晴らしいとりくみである。

 文学とは高い教育を受けた一部の人々だけのものではない。市井に生きる人々の生活と密着した生活感あふれるもの、そして差別の歴史や現実、そのなかでの生い立ちや思いを語るものであり、厳しい差別のなかを懸命に生き抜いてきたことを語ることで人間の尊厳に光を当てるものである。そのような考えのもとに部落解放文学賞は発足した。生い立ちや日常生活のなかにある差別を捉え返すことによって、自分の生き方が大きく変わる。そのことは自分のみならず周りの人々を変えていく力にもなる。差別に満ちたこの社会の変革のために自己変革を遂げていくことは、まさしく部落解放運動そのものといえる。

 7月27日、第50回部落解放文学賞の入賞者は50周年記念式典のなかで表彰を受け、「「50年の軌跡」〜部落解放文学賞のこれから〜」をテーマに、選者によるパネルディスカッションがおこなわれた。そのなかで、識字部門では、部落差別だけでなく貧困や戦争で学べなかった人、外国から来た人の作品も増えていること、各部門でとりあげられるテーマも多様化していること、評論部門について、あまり狭い枠で捉えず積極的に応募してほしいこと、児童文学や小説部門では、「男らしさ」「女らしさ」だけでなく「子どもらしさ」に縛られることなく、いじめや差別が生まれるという10歳頃のものの見方に立ち返り、自由な発想で書いてほしいこと、といったさまざまな意見が出された。部落解放文学賞の将来への期待と同時に責任をあらためて痛感する。

 あらゆる差別からの解放と人権確立をテーマとして掲げてきた部落解放文学賞だからこその作品が多く生まれてきた。第51回も、あらゆる差別をはじめ、それぞれの視点からの苦しみ、喜び、いのちの尊さ、人権・平和への思いや願いをつづった作品を期待したい。

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