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部落解放第20回全国識字経験交流会を成功させよう

「解放新聞」(2024.09.25-3114)

 この間、新型コロナ感染症拡大のため多くの集会や活動が制限をされてきた。しかし、そうしたなかでも識字経験交流集会は2年に1度の開催ということもあって、あまり途切れることなく集会そのものはひらくことができた。

 とはいえ多くは識字生や学習者のニーズにそった日常的な識字活動は、休講とせざるを得ない施設や学級もあった。

 こうした影響は識字にとどまらず、「緊急事態宣言」以降、無責任な「自粛」や休業要請などで、格差や貧困の問題がこれまで以上に深刻化した。行政は生活や医療、福祉に関する情報について効率化を理由にインターネットなどを中心に発信したことで、高齢者や障害のある人、外国人など「情報弱者」とよばれる人々が適切な公的サービスを知ったり、受けたりすることが困難な状態にあった。

 字が書けない、読めないことは仕事や日常生活のなかではさまざまな困難と苦痛を生じさせる。

 非識字であることを自分や親の責任であると考え、恥と思い孤立し、隠さなければならない、それを「いわせない」社会がある。非識字の問題は、深刻な教育問題、社会問題であってけっして当事者の責任ではない。「識字」への正しい理解を多くの人に伝えるためにも識字のとりくみはきわめて重要である。

 日本では識字率が99・8%といわれているが、1955年の調査を最後に公的な調査はおこなわれていない。国は義務教育修了をもって識字能力ありと判断しているが、全国夜間中学校研究会によると、日本の義務教育未修了者は全国に百数十万人存在していると推定されている。部落女性の実態調査でも若年層の非識字者の存在が明らかになっている。在日韓国・朝鮮人や障害のある人、中国からの帰国者、外国からの移住者やその家族、不登校の人や無戸籍の人、貧困や虐待などさまざまな理由で学べなかった人、文字の読み書きはできても、その内容の理解・活用ができない人など、識字を必要としている人はいまだ多く存在する。

 2016年12月、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育機会の確保等に関する法律」(「教育機会確保法」)が公布・施行され、すべての都道府県および市町村にたいして、夜間中学等の設置を含む就学機会の提供、その他の必要な措置を講じることが義務づけられ、19年には「子どもの貧困対策に関する大綱」で夜間中学の設置を促進するとともに充実をはかることとされた。また21年には当時の菅内閣総理大臣が衆議院予算委員会で「今後5年間ですべての都道府県・指定都市に夜間中学校が少なくとも一つ設置されることをめざす」と答弁、今年5月に公表された2020年国勢調査の結果でも、未就学者が9万4千人、最終卒業学校が小学校の人が80万4千人(2020年10月時点)ということが明らかになり、文部科学省は夜間中学校の設置・充実に向けたとりくみの推進をはかっている。今年4月時点で、公立・私立夜間中学校は24都道府県に53校、今後の開校を予定または開校に向け検討中の地域が13県となっており、よりいっそうのとりくみの強化が必要だ。

 2022年は全国水平社が創立して100周年を迎えた。各地でも水平社創立から100年を迎え、各都府県連がとりくみをおこなってきた。

 その水平社は創立から4年という早い時期に「水平社教育方針書」を策定し、軍隊入隊前の青年たちに文字教育をおこなうなど組織的なとりくみをすすめた。おそらく各地でもそのような教育のとりくみがされたのではないだろうか。ただ、この当時はまだ現在のように女性差別や女性の教育について運動として関心が高まっておらず、非識字者に女性が多いとは考えがおよんでいなかったと思われる。そして、まだ識字という言葉が使われていない1950年代に部落解放運動、同和教育運動の高まりのなかで文字の読み書きを学ぶとりくみが各地ではじまっていく。大阪では53年に仕事に必要な運転免許をとるための文字学習会がとりくまれ、63年には福岡で産炭地を中心に識字運動が広がった。69年の部落解放第14回全国婦人集会(現・全国女性集会)で初めて識字をテーマにした分科会が設置され、それ以降、女性たちの運動を中心に全国的な識字運動へとつながっていった。

 今日、識字学級をめぐる状況は変化し、自治体の裁量に任されて予算措置がなくなるなど活動維持が困難なところも出てきている。なによりもまず非識字者にたいする国や自治体の責任を明確化させるとともに、識字活動をさらに発展させよう。それぞれの生きざまを通して差別の実態を明らかにするという、部落解放運動の原点を再確認しながらとりくみをすすめていこう。

 部落解放第20回全国識字経験交流集会を9月28、29日の日程で、和歌山県でひらく。識字交流集会は識字運動20年を機に1983年に第1回が開催されたので、40年以上の歴史を重ねることとなる。

 これまでの識字経験交流集会で確認してきたことは、識字は部落解放運動の原点であり、いままでの成果を生かし、よりいっそう識字運動を発展させ、識字生が中心になるような活動を強化していくことの重要性である。

 そして、「国際識字年」(1990年)で提唱されたように識字はたんに文字の読み書きが目的ではない。教育が国家の責任で保障されるべきものであり、機能的識字の考え方からいくと人生を豊かなものにする、多くの人々とつながるツールでもあること、同時に非識字を生むような社会を変革する、という大きな目的があり、それは識字運動が部落解放運動の原点であるといわれるゆえんでもある。こうした目的に向かって、識字運動をさらに前進させよう。

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