「解放新聞」(2024.10.05-3115)
「今話題の芸能ニュースや社会問題に熱い持論を展開」が売り文句のフジテレビ系列の毎週日曜日午前中の番組「ワイドナショー」の6月30日放送回で、東京都が6月を就職差別解消促進月間と設定し、就職差別撤廃と公正採用選考の推進を目的に発信している啓発動画を揶揄(やゆ)し、公正採用選考について誤った認識を拡散する内容が放映された。
中央本部は、番組を制作・放送したフジテレビにたいし、7月22日付の書面で申し入れ、番組の企画意図、収録から放映に至る経緯、再発防止策を明らかにするよう求め7月29日、8月27日、東京都連とともに話し合いをおこなった。中央本部から赤井書記長、東京都連から近藤登志一・書記長が出席。フジテレビからは、考査・放送倫理部、コンプライアンス推進室、バラエティ制作部の各部署から、各責任者が出席。
当該の放送部分の概略は以下のとおり。都が作成した就職採用面接に関する啓発動画を紹介しながら、ナレーションがつぎのように説明。「このように本籍や出生地、家族の職業や地位など「本人に責任のない事項」や宗教や尊敬する人物など「本来自由であるべき事項」は、〝就職差別に該当する〟として面接時に尋ねないよう注意を促しました。この動画にSNSでは肯定的意見がある一方で、「なんでも差別にするとコミュニケーションがとれない」など疑問の声もあがっています」と、「尊敬する人物」や「家族構成」「本籍や出生地」など就職差別につながる公正採用選考違反の典型的な面接時の質問事項を容認するかのように解説。有名タレントがそれに追随するかのように煽(あお)り立てた。最後には、弁護士までが、それら面接時の質問について、「「結局聞いちゃったらそれを悪く使う可能性がある」という世の中の建前があって、だんだんですが、ケアし過ぎみたいなところに感じることもあるんですが、そこまできちゃってるってところがひとつの問題」と就職差別につながる質問を弁護士の立場で擁護。さらに出演者らは、「東京都がつくってることにビックリしちゃって。ホント暇なんだなと」「バカみたいじゃんこんなの」「就職差別につながるおそれがある14事項の中で、例えば尊敬する人物に関することもダメである…」「うちの会社に来たらちょっと面倒くさいかもわからないんでアウト(不採用)にするのはダメですよってことでしょ」など、就職差別や公正採用選考への無知・無理解による不適切な発言が何らの配慮もなく全国に発信された。
この間の2回の話し合いで、放送に至る経緯と放送後の経過の報告を受け、就職差別や公正採用選考に関する知識の有無、差別や人権に関する理解、人権啓発研修の課題など、最終的には個々人の認識や理解に関わる課題と、番組を制作、放送した責任を有するテレビ局組織総体としての課題を指摘し、確認してきた。
局側からは、就職差別を助長する今回の番組放映について、真摯に反省し、二度とこうしたことが起こらないよう社をあげて再発防止にとりくむとの態度が示され、今後の具体的なとりくみ内容も明らかにされた。しかし、今回の事案が生じた背景として、番組の企画、制作から編集、放送に至るスタッフの「無知」「誤認」など、個人や各現場に主因があると受けとれる説明にたいし、番組を制作、放送した局総体としての責任を明確にすることを求めた。収録から放送までに数日の猶予とチェックする機会がありながら修正や訂正に至らなかった点や、都から制作現場の責任者への申し入れにもかかわらず、コンプライアンス推進室への報告など社内での情報共有がなされていなかった点など、組織としての人権感覚やガバナンスの点からみた大きな課題を指摘した。
また今回の事案について同盟は、労働行政を主管する厚生労働省が、「職業安定法5条の5」に抵触するとして、就職差別につながるおそれがある個人情報14事項を列挙し、採用面接で収集することのないようよびかけているもので、コンプライアンスの問題でもあることを説明。今回の放送内容は、円滑なコミュニケーションのためにはコンプライアンス上不適切とされる質問も当然だとするものであり、フジテレビがグループとして掲げる「フジ・メディアホールディングス グループ人権方針」や「フジテレビ コンプライアンスガイドライン」の考え方からも大きく逸脱すると指摘。ガイドラインを局内全体で共有化、実効あるものとしていくことを求めた。
この間の話し合いでの指摘や確認内容について、番組を制作、放送したテレビ局総体としての責任等を明確にしたうえで、次回までに書面での報告を要請した。
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