「解放新聞」(2024.12.15-3122)
【福井】 福井県交渉を11月12日、小浜市の若狭図書学習センターでおこない、福井県連の山下敬太郎・委員長、河合徹・書記長はじめ県連の代表、近畿ブロックから滋賀県連、大阪府連の代表、中央本部から池田、安田、髙橋、大西の各中執など55人が参加した。福井県から池上栄志・健康福祉部長、大西典宏・地域福祉課人権室長ら担当者が出席し、要求事項の回答について説明した。
交渉では、①2003年に施行された「福井県人権尊重の社会づくり条例」の改正②全市町でのモニタリング体制整備③人権啓発・教育連絡協議会のとりくみ④公正採用選考問題⑤本人通知制度と相談体制の確立、などを中心に意見交換をおこなった。
①について県は、「福井県人権施策基本方針」を人権施策推進審議会が毎年見直しており、それぞれの人権課題に対応している、とした。人権救済の法制度については、国に要望するとの回答であったため、「現在の「条例」では被害者が救済されない。「全国部落調査」復刻版出版事件裁判で福井県は削除対象から除外されており、この「条例」のままで識別情報がばらまかれたとき、県民を差別から守れるのか」と厳しく指摘。山下委員長も「現実に差別があるなかで、被害者はがまんしている。県として被害者を守るための対応策が必要。市町でも実効性のある「条例」策定がすすむよう、まず県が改正するべきだ」と強く要請した。また、審議会の開催が年1回であることから、当事者の意見もふまえたていねいな議論も求めた。
②では、県は2019年6月からモニタリングを開始し、昨年度からは県独自の予算を確保、AIによる自動巡回システムを活用し、46件の(うち11件がAIによる)削除要請をしたことが報告された。また、現在12市町がモニタリングにとりくんでおり、ひき続き全市町に広げていくとりくみの必要性を強調した。
③では、県から初任者への「人権に関する教員意識調査」の結果が報告された。設問の「同和問題の内容を知っており、説明できる」が35・9%であったものの、昨年度よりも3・9%減少するなどの実態が明らかにされた。これを受けて、研修を充実させるとともに、初任者だけでなく、効果測定のためにも継続的な調査が必要だと指摘した。
④では、昨年度の採用面接などでの不適切事象について15事業所16件あったと回答。企業にたいしては労働局が確認や指導、啓発をおこなっていると説明。16件のうち不採用は2件あり、その後の対応について「後日別の企業に就職できた」と説明したが、「県民が法に違反した選考をされ、結果不採用になった実態にたいして、県として企業に指導するのが当然。労働局にどのような指導をしたのか聞き取りをするべき」と強く求めた。また、「学校での教材化をすすめる必要がある。違反質問の何が問題か知らない生徒が増えている。学校にも企業にもあらためて周知するとともに、企業内公正採用選考人権啓発推進員の役割の大きさを認識したとりくみが重要」と強調。また、企業のトップへの啓発にもとりくむよう強く要請した。
⑤では、栃木県で起こった戸籍等不正取得事件について、福井県では5市町12件の被害が確認されていると説明。いずれも本人通知制度を導入していないことから、一日も早い導入と相談体制の確立を求めた。県は、昨年度に若狭町が導入したと報告、「今後も市町に働きかけていく」と回答した。
交渉のまとめで、山下委員長は、「当事者の意見をふまえることが差別撤廃の第一歩。県は市町との連携を強めて、施策の充実をすすめてもらいたい」と要望した。
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