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主張

 

全国ブロック別中央解放学校の成果をふまえ、
力を合わせて諸課題を闘い抜こう

「解放新聞」(2024.12.15-3122)

 全国ブロック別中央解放学校を11月に4ブロックでひらいた。当面する運動課題等に関してあらためて認識を深めるべく、結集いただいた幹部活動家・運動家のみなさんにあらためて感謝申しあげるとともに、今後の同盟組織と運動の活性化に役立てていただきたい。

 中央解放学校で問題提起した運動課題などの柱に関して、あらためて押さえておきたい。

 第1は、部落解放・人権政策確立の闘いである。この間、政府や各政党への働きかけなど国会内外はもとより、各地方議会でも人権条例ならびに部落差別解消に関する条例、インターネット上の人権侵害をなくすことを目的とした条例の改正・制定を求める運動にねばり強くとりくんできた。各実行委、各都府県連および各地域協議会、各支部でのご尽力に敬意を表する。

 今年5月「情報流通プラットフォーム対処法」(「情プラ法」)が成立・公布され来春にも本格施行を控えている。私たちは「情プラ法」の具体化とともに、同法を積極活用し、インターネット上の差別、人権侵害の規制と被害者救済の充実・強化、さらに部落解放運動の創造と前進につなげていくことが重要である。

 10月の衆議院解散・総選挙結果を受けて、このほど発足した石破政権では、与野党の協議などを通じた「民主的な」国会運営も予想される。超党派の議員が集まり発足して1年あまりとなる「ネット社会におけるプライバシーの在り方を考える議員連盟」(会長:小泉進次郎・衆議院議員)をはじめとする各政党への働きかけ、政府および関係省庁との事務折衝を通じた「情プラ法」具体化に関わる懸案課題への対策などの充実、ネット上の部落差別を禁止することを盛り込んだ「部落差別解消推進法」の強化・改正をめざしたい。

 地方レベルでも「情プラ法」の趣旨・目的を活かしたとりくみの強化をお願いしたい。11月21日に総務省「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」がひらかれ、「情プラ法」の省令およびガイドラインに関する考え方が議論された。近く「情プラ法」にもとづく省令が示されるとともに、削除対象の基準となる「違法情報ガイドライン(案)」にたいするパブリックコメントの募集がおこなわれる予定でもある。中央本部としては、それらの趣旨・内容等をふまえて、あらためて運動の方向性について提起したい。

 第2は、狭山事件の再審を求める闘いである。9月に袴田巖さんの再審無罪判決、10月には福井中学生殺害事件の再審開始が決定し、検察は即時抗告を断念した。飯塚事件でも福岡高裁が検察に証拠リストの開示を求めるなど、袴田さんの判決を機に、メディアでの報道もあいまって世論も高まりをみせている。

 あわせて「再審法」改正(「刑事訴訟法」の一部改正)を求める動向に関しても、今年3月に発足した超党派による「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」の入会議員数は全国会議員の49%、347人(今年9月現在)に達し、各地方議会でも改正を求める意見書等がつぎつぎと採択されている。ひき続き各自治体に意見書の採択を求めよう。

 この間、狭山事件再審弁護団は、三者協議の機会を通じて裁判所や検察庁と議論を積みあげ、家令和典・裁判長に新証拠の概要についてプレゼンテーションをおこなったり、新たなインク鑑定を実施して鑑定書提出に向けた準備にとりくむなどしてきた。もはや検察との論争ではなく、証人尋問で決着をつけるところまで来ているといえる。11月1日にひらかれた狭山事件の再審を求める市民集会で、石川一雄さんは、「不撓不屈(ふとうふくつ)の精神で、何としても第3次再審で勝利したい」と決意をのべた。「再審法」改正を求める運動と連動しながら、今度こそかならず、このうねりを狭山事件の再審開始につなげ、無罪をかちとろう。

 第3は、「部落探訪」の削除を求める「部落探訪」裁判闘争である。この間、被告である鳥取ループ・示現舎のMが、自身の所在地を管轄する横浜地裁相模原支部に移送することを申し立てたこともあり、新潟や大阪の第1回口頭弁論が取り消しとなった。それぞれの弁護団では移送申立てを却下するよう意見書を提出しているが、口頭弁論の日程はいずれも未定だ。2016年3月からスタートして8年超となる「全国部落調査」復刻版出版事件裁判(「復刻版」出版事件裁判)と同様、長期戦を余儀なくされそうである。

 これも、部落差別を禁止(規制)する法律、人権侵害に関する救済する法律がないという現状があるからだ。

 包括的な差別の禁止、人権救済機関の設置という一つの目標に向かって、あらためて具体的な立法事実を着実に積みあげていく闘いが重要となっている。「復刻版」出版事件裁判では、昨年の東京高裁判決で私生活の平穏などの人格的利益の侵害が成立し「差別されない権利」が認められた。日本には差別の禁止規定や人権侵害を救済する手立てがないことを社会に問うことにもつながってきている。これに関わって、「情プラ法」は、誹謗中傷・人権侵害を受けた被害者救済への道をひらいたとはいえ、あくまでSNS上での権利侵害情報等が対象である。大規模プラットフォーム事業者の自主規制により対処するもので、インターネット全般ではない。

 第2弾である「部落探訪」裁判闘争は、悪質で確信犯的な言動を続けている者にたいする闘いである。インターネット上で学識・研究などを標榜して会員制サイトを立ちあげ、被差別部落にたいする偏見・差別を煽っている行為をどう規制させていくのか。そして「同和地区の識別情報の摘示」だけでなく、私たち被差別部落出身者にたいする侮辱の意志が現れているような書き込みなども禁止することができるのか。私たち被差別当事者を差別する〝表現の自由〟は断固許さないという基本姿勢を示しつつ、司法での闘いを継続していきたい。新潟・埼玉・大阪も部落解放同盟各府県連が原告となって裁判に立ちあがっている。中央本部として組織的・財政的な事情も考慮しながら、各地で裁判闘争に立ちあがっていただくよう積極的に支援していく所存である。

 第4は、すべての同盟員が対等な立場でともに部落差別撤廃・人権確立に向けた運動に参画し、それらを支える組織への改革に向けた課題である。

 2016年3月に「男女平等社会実現基本方針」第2次改訂を策定してから9年が経とうとしている。今回の中央解放学校では、第66回部落解放全国女性集会でおこなわれたアンケート調査結果から明らかになった課題などが報告された。部落解放同盟としてこうした課題をどう克服していくかが問われている。

 同アンケート結果では「大会などへの参加は男性が優先になっている」など、組織内の性別役割分業意識の根深さが指摘された。またセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)やパワー・ハラスメント(パワハラ)等を目撃した回答も寄せられている、この現実を私たちは直視しなければならない。部落解放同盟組織内の「内なる差別」をどう克服していくのか。部落の完全解放と人権が確立した社会をめざしている私たちだからこそ、とりくまなければならない重要な課題である。

 中央本部では男女平等推進本部が中心となって、セクハラおよびパワハラへの対応方策について論議を積み重ねている。問題が発生・発覚したさい、組織的にしっかりと対応していくための方策などを提案するので、中央委員会での積極的な論議をお願いしたい。

 今日的な運動と組織の現状を直視し、各地域の実情にあわせながら、これらの運動の課題に挑んでいただきたい。中央本部として各都府県連および各地協・各支部のとりくみを下支えしながら、部落解放運動の飛躍をめざしていきたい。ともに頑張ろう。

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