「解放新聞」(2025.03.05-3131)
この間、「USAIDの支援団体リスト(日本)に部落解放研究所(解放同盟)の表記も」「USAIDから日本財団経由で部落解放同盟に資金が流れていた模様」といった情報がSNS上に拡散されている。部落解放同盟として、今回の事案についての経過を明らかにし、こうした情報がまったく虚偽であることに強く抗議するものである。
米国国際開発庁(USAID)は、米国政府の対外援助機関であり、世界各地で人道支援事業を展開している組織である。USAIDの活動は広範に取り組まれており、飢餓に苦しむ国々に食料を提供するだけでなく、食料が不足しそうな地域をデータ解析で予測しようとする飢饉検出システムは、世界標準として広く活用されている。また、USAIDの予算の多くは、ポリオ予防接種のほか、世界的流行(パンデミック)につながる可能性のあるウイルスの拡散を防ぐための健康事業にも使われている。
なお、最近では、トランプ大統領がUSAIDの閉鎖を計画しているとの報道があり、政府効率化省のトップに任命されたスペースX社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)も「USAIDは急進左派が大部分を占めるようになり、腐敗してきている」「多くの資金が民主党に有利な報道をするための報酬として、ニュースメディアに支払われている」とSNSで発信している。また、「USAIDが閉鎖的な組織運用をしている」と指摘し、廃止にむけた検討が米国政府内ですすんでいることを示唆している。
こうした状況のなかで、今回、「USAIDという団体から資金提供として10万ドルが部落解放同盟に拠出されている」というまったくの偽情報がSNS上に拡散されている。経過は、1993年に米国国際教育研究所(IIE)という団体が「南アフリカ情報交換」(SAIE)というプロジェクトをすすめるなかで、部落解放研究所(当時)に対してアンケートの依頼があり、その結果がUSAIDのサイトに掲載されているものである。SAIEはIIEによる民間基金で運営されており、このアンケートは世界の約450団体に対して、南アフリカへの援助に興味があるかを調査し、その結果の一覧がUSAIDのサイトに掲載されたものである。また、このサイトにある「10万ドル未満」との記述は、当時の部落解放研究所の南アフリカ関連の予算が10万ドル未満であると回答した内容である。
今回の「USAIDから部落解放同盟に10万ドルの資金が流れていた」という偽情報は、こうした経緯のなかで拡散されたものであり、部落解放同盟がUSAIDから資金提供があったという事実は一切存在しない。
以上のように、部落解放同盟は、SNS上で、このような偽情報が拡散されることによって、部落差別撤廃にむけた組織や運動に対する偏見や誤解を生み出す結果となることを強く懸念し、抗議するものである。
2025年2月20日
部落解放同盟中央本部
執行委員長 西島藤彦
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