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狭山第4次再審勝利へ、今通常国会で「再審法」改正の実現を

「解放新聞」(2025.04.15-3135)

 61年以上も無実を叫び続けた石川一雄さんが3月11日に死去した。第3次再審請求中だった。獄中31年7か月、そして仮出獄してから30年以上、えん罪を訴え、再審無罪を訴えていた。

 昨年、獄友である袴田巖さんの判決公判には、杖をつきながら静岡地裁にかけつけ、無罪判決を聞き、喜び、つぎは自分だと決意を新たにしていた。

 袴田ひで子さんも「つぎは石川さんの番だ」と集会で訴え、多くのえん罪と闘う仲間が、応援の声をあげていた。

 昨年末には、弁護団がインク資料の新鑑定を提出し、証拠の万年筆が被害者のものではないことが科学的に明らかになり、弁護士の報告を聞いた石川一雄さんは、事実調べ、再審開始に向けて希望に燃えていた。その矢先であった。私たちは、石川一雄さんの無念を晴らし、なんとしても再審無罪判決を実現するまで闘わねばならない。

 第3次再審請求の手続きは請求人死去により終了したが、弁護団はすみやかに第4次再審請求の準備をすすめた。そして、4月4日、妻の石川早智子さんが、遺志を継いで、弁護団とともに第4次再審請求を申し立てた。石川早智子さんは4月8日、高裁内でおこなわれた記者会見で、「なんとしても夫の無念を晴らしたい。亡くなったいまもかかっている「見えない手錠」を外したい」「「無罪という判決を聞いて両親のお墓に報告したい」との石川の思いとともにこれからも闘い続けます」と訴えた。私たちは、石川早智子さんの思いと決意を受けとめ、石川一雄さんの雪冤(せつえん)を果たすまで全力で支援していこう。

 弁護団は、第3次再審請求で提出した新証拠をあらためて第4次再審請求の新証拠として提出し、鑑定人の証人尋問と再審開始を求めている。

 当時の石川一雄さんが非識字者であり、脅迫状は書けなかったことを明らかにした教育学者の鑑定、脅迫状を書いた犯人と石川一雄さんは別人であることを明らかにしたコンピュータ筆跡鑑定、有罪証拠とされた発見万年筆は被害者のものとはいえないことを明らかにしたインク資料の蛍光X線分析鑑定など、石川一雄さんの無実を示す新証拠をあらためて学習、教宣し、東京高裁に証人尋問と再審開始を求めよう。

 狭山事件の再審を求める市民の会(事務局長:鎌田慧さん)は、第4次再審請求において、鑑定人の証人尋問の実施と再審開始を東京高裁に求める新たな署名運動をよびかけることにしている。

 狭山第4次再審の闘いを全国ですすめよう。

 第3次再審請求で重要な新証拠となっている逮捕当日の上申書や取調べ録音テープが証拠開示されたのは2010年5月、事件発生から47年後、最初の再審請求から33年後である。重要な鑑定資料となっているインク資料(発見万年筆で書いた数字)が証拠開示されたのは2016年である。

 しかし、検察官は、その後は、弁護団の証拠開示請求に応じず、求める証拠があるかどうかも答える必要がないなどと不当な対応に終始している。こうして第3次再審請求は19年を費やした。石川早智子さんは、石川一雄さん死去後にひらかれた日本弁護士連合会(日弁連)の「再審法」改正を求める院内集会にあてたメッセージで、「もう少しでも検察官が早く証拠開示に応じていれば」「なぜこれほどえん罪との闘いが長くかかるのか」と法の不備を訴えていた。

 昨年、再審無罪判決が出された袴田事件では、2014年に静岡地裁で再審開始決定が出されたにもかかわらず、再審開始が確定するまでに9年、再審無罪判決まで10年も費やし、袴田さんがえん罪を訴えて58年もの時間がかかった。

 再審開始の決め手となった「5点の衣類」のカラー写真が検察官から証拠開示されたのは、事件から44年以上も経った2010年12月だった。最初の再審請求(1981年)から29年以上も経ってからの証拠開示だったのだ。検察官が最初の再審請求で証拠開示していれば再審開始はもっと早かったはずだ。

 また、検察官の再審開始決定にたいする不服申し立てがなければ、10年前に再審公判が始まり、無罪判決が出されていたはずだ。

 いまも再審の闘いが続いている大崎事件、日野町事件、名張事件、福井事件など、いずれも同様の法の不備が指摘されてきた。

 検察官が証拠開示に応じず、裁判所の再審開始決定に不服申し立てをおこなうがために、えん罪被害者に命を削るような長い闘いを不当に強いているのである。こうしたえん罪被害者の闘いが長期にわたる原因となっている現行の再審手続きの不備を法改正によって是正すべきとの声が、えん罪被害者、弁護士、学者、えん罪支援者から大きくなっており、袴田事件の再審開始を機に大きく動いた。

 日弁連は、再審請求における検察官の証拠開示の義務化、再審開始決定にたいする検察官の不服申し立ての禁止、事実調べなど再審の手続きの整備の規定を盛り込んだ「刑事再審に関する刑事訴訟法等改正意見書」を2023年2月に公表し、国会での審議を求めた。

 これを受けて、2024年3月には、各党の党首らがよびかけ人となって、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が結成され、会長には柴山昌彦・衆議院議員(自民党)、幹事長には逢坂誠二・衆議院議員(立憲民主党)、事務局長には井出庸生・衆議院議員(自民党)がそれぞれ就任し、勉強会や法務大臣への要請など活発に活動を続けてきた。

 今年2月26日には議員連盟の総会において、「再審法」(「刑事訴訟法」)改正の骨子案が了承された。

 改正案骨子は、①再審請求人側から請求があれば、裁判所は相当と認めるときには検察官に証拠開示を命じなければならないこと、②裁判所が再審を開始した場合に検察の不服申し立てを禁止すること、を柱とするものだ。

 柴山会長は、「問題は法改正の内容とスピード」「えん罪被害者の迅速な救済が妨げられてはならない」とのべ、議員立法を今国会で提出、成立をめざす方針を確認した。

 さらに3月25日にひらかれた議連総会では、「刑事訴訟法」改正案の要綱を了承し、今国会中の議員立法による法案の提出、成立をめざし条文化をすすめることをあらためて確認した。

 議連参加議員は3月時点で379人で、全国会議員の過半数となっており、今国会で議員立法として「再審法」改正法案の提出、可決成立が実現可能な状況になっている。

 この通常国会(会期は6月22日まで)において、「再審法」改正を実現するために、いまが正念場である。さらに、地元の国会議員へ、議連への参加の働きかけと要請をすすめる必要がある。

 2月には部落解放同盟として院内集会をひらき、地元国会議員への要請行動も実施した。3月25日に日弁連が「今国会での再審法改正の実現を求める院内会議」を開催し、石川早智子さんのメッセージも紹介された。

 さらに、私たちは、地元の国会議員にたいし、議連への参加の働きかけと要請をすすめる必要がある。

 狭山事件の今後の第4次再審の闘いにおいても「再審法」改正は重要な課題だ。今国会で議員立法による「再審法」改正の早期実現に向けたとりくみをすすめる必要がある。

 21道府県議会を含む546の地方議会で、「再審法」改正を国会に求める意見書が採択されている。知事や市区町村からの賛同表明も220人におよんでいる。(2025年2月時点)

 さらに、地方議会での意見書の採択をすすめ、各自治体の首長の賛同表明を広げる運動をすすめよう。

 なんとしても現在の通常国会において議員立法として「再審法」改正を実現しよう。

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