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NEWS & 主張

先人たちの思いを胸に ~運動ふり返りバトンつなごうと
長崎
・九州ブロック

「解放新聞」(2025.09.05-3149)

今年発見された資料から、ムラ内外の人々の復興への思いにふれた(8月8日・長崎市)

今年発見された資料から、ムラ内外の人々の復興への思いにふれた(8月8日・長崎市)

 【長崎、九州ブロック編集協力員】 被爆80周年の8月9日を迎えた長崎。大きな節目である今年、近い将来「被爆者なき時代」が訪れることから、被爆者の訴えと「平和のバトン」を受け継いでいく次世代のとりくみとが交じり合い、各地でさまざまなとりくみがあった。

 「10年後の90周年はできんやろうね…」。

 これまで節目の年には記録DVDの作成や懇親会などの企画をおこなってきた長崎郷土親興会でも、今年はこれまでの集大成といったとりくみがすすめられた。

 8月9日に緑町墓地でおこなわれる「原爆犠牲者追悼法要」は、近年の猛暑の影響から今年は参拝者の受付と原子爆弾が投下された午前11時2分の黙とうにあわせての読経のみと内容を簡素化した。あわせて、前日8日の夕刻には、被爆80周年の学習会・追悼、懇親会を市内のホテルでひらき、地域などから多くの参加があった。

復興するムラ資料でたどり

学習会では、NPO法人長崎人権研究所の阿南重幸・代表理事が「原爆と被差別部落」と題して講演。浦上町の被爆体験の継承のためにこれまでの記録を整理した研究所刊行の長崎人権ブックレットその7『原爆と被差別部落―長崎・被爆80周年を迎えて―』の内容をわかりやすく解説した。

なかでも今年3月に新たな資料として発見された「浦上会館(仮称)再建計画」は、ムラの活動の拠点であった「旧真宗青年会館」の再建を戦後まもなくよびかけた文書で、焼け野原となった町の再建を自分たちの手でおこなっていこうという、故郷の復興への熱い思いが読みとれる。残念ながら、結果として再建計画は頓挫してしまうのだが、この計画によびかけ人として賛同した人のなかには、部落の人だけでなく、近隣の医者や僧侶の名前があったことも明らかになっている。

学習会後にひらいた懇親会では、研究所が保管するアーカイブから、これまで多くの人たちに自身の被爆体験を伝えてきた先人たちの写真や音声をまとめた映像と、被爆70周年当時の懇親会のようすも写真でふり返り、参加者と思い出をわかち合った。

9日は、朝から雨模様となり、九州各県から参拝者が訪れた午前10時前後には大雨に。日よけ用のタープや簡易テントでの対応は困難と判断し、読経を中止した。関係団体への連絡を済ませたころにやっと雨が落ち着き、黙とうのサイレンが鳴り響いた午前11時2分には雨はあがり、黙とうをする多くの人の姿が墓地にあった。

共同墓地を管理する長崎郷土親興会は、墓地の維持管理と8月9日の追悼法要を主な活動としている。その管理・法要費が活動の財源となっているが、全国の墓地の運営状況と同様、管理者の引き継ぎの途切れや、年会費の未納といった問題が年々増えている。これらの課題も「致し方なし」としてか、親興会から自発的な改善に向けた姿勢は見られないまま80年を迎えた。

長年、旧浦上町で唯一残った共同墓地での追悼法要は、部落の人だけでなく、行政や教職員、校区の子どもたち、県内外のさまざまな人たちが「反戦・反核・反差別」への思いをあらためて考える場となってきた。しかし、とりくみの継続は、長崎のいろいろな平和活動と比べてみても困難と言わざるを得ない。そんななかで今年発見された「再建計画」は、過去から届いた先人たちからのメッセージなのかもしれない。

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