
「解放新聞」(2026.4.15-3172)
2024年12月4日、最高裁判所(第3小法廷 平木正洋裁判長)は、いわゆる『全国部落調査』復刻版出版事件について、一審原告と一審被告の双方による上告を棄却し、上告受理申立てを不受理とし、当該事件についての東京高裁判決(2023年6月28日判決。土田昭彦裁判長)が確定することとなった。本件の東京地裁判決(2021年9月27日判決。成田晋司裁判長)は原告の権利侵害の内容について「差別されない権利」の侵害を認めず、主としてプライバシー権侵害が存在するものと判断した。
これに対し東京高裁判決は、正面から「差別されない権利」が侵害されることを認め、しかも「差別されない権利」は憲法13条及び14条に由来することを宣言した。「差別されない権利」を人格権の内容として承認した判決は本件が初であり、最高裁が認めた判決で、憲法に由来する一般的な権利内容として「差別されない権利」を承認したことは、すべての差別と闘う人たちにとって画期的な成果であると言える。
東京高裁判決は、①部落差別の実態を詳細に分析し、②制度上の身分差別はなくなったにもかかわらずなお差別・偏見が残存していることは部落差別の根深さを示すものであると評価し、③部落差別はその後の人生に甚大な被害を与えることを認め、④インターネットの部落差別の特質(ネットは便宜さもある反面で誤った興味本位の情報もあり、インターネット上の情報に接することで新たな差別意識が生じかねない点)を踏まえ、「差別されない権利」の侵害を認めるという、緻密かつ詳細な論理性をもって作成されている。この東京高裁判決を最高裁としても是認したことは、インターネットの発達に伴い、新しい形で部落差別が激化している現状を踏まえた適切な判断であると評価する。
東京地裁判決は出版差止の都府県の範囲を25都府県にとどめ、東京高裁判決はこれを31都府県に拡大したが、最高裁は更なる拡大を行うことを回避した。被差別部落の地名を晒すことはどの都府県であっても違法であるが、権利侵害を認める原告がいない10県については差止の対象範囲外であるとする東京高裁判決の判断が維持されたことになった。
しかし、差止対象から漏れた10県において部落差別が生じないことはあり得ないし、都府県をまたいだ住所の移転も日常茶飯事であるから、最高裁の判断は硬直的で是認できない。インターネットは県境どころか国境すら軽々と超えて情報伝達をするのであるから、全国一律の出版差止を認めるべきであった。ただし、最高裁としても東京高裁判決が差止対象外とした10県について被差別部落の地名を晒すことは違法と判断していることは広く認識されるべきである。
その後、鳥取ループ・示現舎はSNS上に、この10県の地名リストについて再出版を示唆する投稿を掲載した。この状況を受け、当該県連と協議を重ねた結果、2025年12月、千葉・静岡・岐阜・福井・富山の5県で新たに原告を立て、『全国部落調査』復刻版出版事件第二次提訴を行った(東京地裁・令和7年(ワ)第36723号 損害賠償請求事件)。
本訴訟は、被差別部落の所在地情報等を収録した『全国部落調査』の出版・公表行為が、被差別部落に出自を有する者に対する社会的差別を助長し、人格権としての差別されない権利を侵害するものであるとして、その差止め及び損害賠償を求めるものである。当該侵害は、個々の同盟員に対する権利侵害であると同時に、被差別部落出身者全体に対する差別としての性質を有するものであり、断じて許すことはできない。
部落解放同盟第83回全国大会は、被差別部落に出自を有し又は差別により権利侵害を受け、若しくは受けるおそれのある同盟員が、上記訴訟に関し、「差別されない権利」その他人格的利益の保護のために行う差止請求及び損害賠償請求について、部落解放同盟が自己の名において訴訟を追行することを承認し、部落解放同盟に対し任意的訴訟担当としての訴訟追行権限を授与することを確認する。
以上、決議する。
2026年3月19日
部落解放同盟第83回全国大会

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