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反戦・平和・反差別の闘いを強めよう

「解放新聞」(2026.8.15-3184)

 第2次世界大戦で、日本はアジア・太平洋地域へ侵略を広げ、植民地支配と戦争によって多くの人びとのいのち、暮らし、尊厳を奪った。中国、朝鮮半島、東南アジアをはじめ各地にもたらした被害と加害の歴史を、私たちはけっしてあいまいにしてはならない。

 強制労働や日本軍従軍「慰安婦」問題、民間人への加害、広島と長崎への原爆投下など、戦争は国家の名のもとに人間を踏みにじるものであった。

 敗戦から81年を迎えるいま必要なのは、過去を美化することでも、責任を薄めることでもない。歴史の事実に誠実に向き合い、二度と戦争をくり返さない決意を、いまの社会と政治に活かすことである。戦争の記憶を受け継ぎ、差別や排外主義を許さず、人権と尊厳が守られる平和な社会を築くため、私たちは反戦・平和の歩みをさらに強めていかなければならない。

 世界はいま、戦争と分断の連鎖のただなかにある。ロシアによるウクライナ侵攻は長期化し、停戦への道筋はなお見えない。パレスチナ・ガザでは深刻な人道危機が続き、中東ではイスラエル、イラン、米国をめぐる緊張が高まり、地域紛争が国際的な危機へ広がるおそれがある。台湾海峡や朝鮮半島をめぐる緊張も重なり、日本周辺でも「有事」を前提にした議論が強まり、沖縄・南西諸島を中心に軍事拠点化がすすめられている。危機を理由に軍拡を当然視するのではなく、危機だからこそ、外交と対話、人道と国際協調に立ち返る政治が求められている。

 この間、日本の安全保障政策は大きく変質してきた。第2次安倍政権は、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法可決を強行し、自衛隊の海外活動と日米軍事一体化を拡大した。その流れは、2022年12月に閣議決定された安保関連3文書によってさらに推しすすめられた。政府は「反撃能力」と称して敵基地攻撃能力の保有に踏み込み、長射程ミサイル、弾薬、無人機、基地の強靱化(きょうじんか)などに巨額の予算を投じている。2026年度の防衛関係費は9兆353億円に達し、はじめて9兆円を超える過去最大規模となった。こうした軍事力強化は、専守防衛を掲げてきた戦後日本の歩みを根底から揺さぶっている。

 さらに政府は今年4月に「防衛装備移転三原則」と運用指針を改定し、完成品移転を5類型に限る制約を撤廃した。殺傷・破壊能力をもつ武器の移転にも道をひらき、「武器輸出を抑制する国」という立場を大きく後退させるものである。国会関与は事後通知にとどまり、移転先での使用や第三国移転を抑えられるのかという疑問も残る。軍事力を増せば安全が保障されるという発想は、相手国の軍拡を招き、緊張の悪循環を生む。いま日本が選ぶべき道は、武力による抑止ではなく、平和憲法を基礎にした外交、対話、信頼醸成、そしていのちと暮らしを守る安全保障である。

 部落解放運動が掲げてきた反戦・人権の立場からも、この軍拡路線を見過ごすことはできない。「戦争は最大の差別であり、最大の人権侵害である」という松本治一郎・元委員長の遺訓と戦前の歴史的教訓をふまえ、私たちは連帯・共闘する仲間とともに、各地から戦争と軍拡政策反対の声をあげ、平和と人権が確立した社会の実現に力を注がなければならない。

 軍拡の進行と並行して、社会では不安や分断をあおる言説が広がっている。経済的困難や将来不安が深まるとき、政治は生活を支え、孤立を防ぎ、誰もが尊厳をもって生きられる社会をつくる責任を果たさなければならない。ところが現実には、移民、外国人、マイノリティ、生活に困窮する人びとへ怒りを向けさせる排外的な言動がくり返されている。戦争は、敵をつくり、人を分断し、差別を正当化するところからはじまる。だからこそ私たちは、排外主義を許さず、違いを認め合い、ともに生きる社会を地域から築く必要がある。

 SNSやインターネット上では、偽・誤情報や偏見が瞬く間に拡散され、事実より感情的な対立が先行しやすい。憎悪や差別をあおる言葉は、地域社会や職場、学校、日常生活にも影を落とす。こうした時代だからこそ、私たちは一人ひとりの声と経験に耳を傾け、他者の痛みを自分の問題として受け止める姿勢を失ってはならない。地域で語り合うこと、差別に沈黙しないこと、戦争の記憶を学び直すこと、弱い立場に置かれた人びととつながること。そうした積み重ねによって、差別や分断をあおる動きに流されず、対話と連帯で人権を守る社会をつくることができる。

 2024年、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞した。この受賞は、ヒバクシャの長年の証言と市民の粘り強い運動が世界を動かす力をもつことを示した。ヒバクシャがみずからの体験を語り、核兵器の非人道性を世界に訴えつづけてきた歩みは、「核兵器を二度と使わせない」という国際的な規範を支えてきた。ノーベル委員会は、日本被団協が被爆証言を通じて核兵器廃絶を訴えつづけ、「核兵器を二度と使わせない」という国際的規範の形成に貢献してきたことを評価した。その一方で、核保有国が核兵器を近代化し、核使用を示唆する威嚇を強めるなか、核兵器使用を禁じる国際的な規範が危機にさらされていると警告した。

 ヒバクシャの高齢化がすすむいま、その証言を受け継ぐ責任はますます重い。広島・長崎の惨禍を過去の出来事にせず、核兵器のない世界を求める声をつぎの世代へつなぐことは、日本社会に課せられた歴史的責務である。軍事力への依存が強まる時代だからこそ、ヒバクシャの「ふたたびヒバクシャをつくらない」という訴えを、平和運動の原点として受け止め直さなければならない。

 敗戦から81年を迎え、いま必要なのは、危機を理由に軍拡へすすむことではなく、日本国憲法が掲げる「平和主義(9条)」、「基本的人権の尊重(11条)」、「個人の尊厳(13条)」、「生存権(25条)」の理念に立ち返ることである。安全保障とは軍備増強だけではない。差別されず、貧困に追い込まれず、いのちと暮らしが守られ、安心して生きられる社会こそ、根本的な安全保障である。

 平和フォーラム主催の「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8・15集会」は、戦争で奪われたいのちに思いを寄せ、二度と戦争をくり返さない決意を確かめ合う場である。満州事変から日中戦争、太平洋戦争へと続いた15年戦争は、アジア・太平洋の広い地域に甚大な犠牲をもたらした。政府資料では、日本の戦没者は軍人・軍属約230万人、民間人約80万人とされるが、数字だけでは語れない一人ひとりの人生と、家族をはじめ、遺された人びとの悲しみがあった。戦争体験を直接聞く機会が急速に少なくなるいま、地域の証言や資料を掘り起こし、記憶を記録し、学び直し、語り継ぐとりくみを社会全体で強めなければならない。それは過去の犠牲を忘れないとりくみにとどまらず、現在の差別や軍事化を問い、平和な未来を切り拓(ひら)く実践でもある。

 私たちは、「戦争をさせない1000人委員会」などのとりくみに連帯し、核も戦争もない21世紀を実現するため、各地から声をあげつづけよう。軍拡と排外主義に抗し、沖縄や南西諸島をはじめ軍事化の負担を押しつけられる地域の声に耳を傾け、ともに行動しよう。日常の職場、学校、地域で、戦争を許さない世論を広げ、若い世代とともに学び、語り合う場をつくっていこう。小さな対話と学習を積み重ね、沈黙せずに行動する力を広げよう。

 「戦争法」の廃止、平和憲法改悪の阻止、核兵器廃絶、そしてすべての人の人権と尊厳が守られる社会の実現へ向けて、反戦・平和の闘いをいっそう前へすすめていこう。

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