第36回全研分科会報告
狭山再審闘争と司法民主化の課題
「解放新聞」(2002.11.04-2093)

 第四分科会の狭山再審闘争と司法民主化の課題には百九十三人が参加した。分科会は、石川一雄、早智子さんのあいさつから始まり、狭山事件再審弁護団の中山武敏・事務局長、立命館大学の指宿信さん、指紋鑑定士で狭山の鑑定書を作成している齋藤保さんが、それぞれの立場から話をすすめ、盛りだくさんで充実した中身になった。
 石川一雄さんは、証拠開示に重点をと訴えた。早智子さんは住民の会が新しい風をおくっている、遅遅とはいえ、狭山は動いていることを実感していると語った。
 中山弁護団事務局長は、狭山再審が日弁連などで正式に取りあげられるようになり、昨年は自分が証拠開示の問題を訴えた、新しい風が吹き、本当に動いている、とのべた。裁判所の事実認定の矛盾は、誰が見てもわかるようになってきている。このことが、深いところで浸透している。事実調べすらせず、証拠開示がないということが一番問題だ。情勢は厳しい、厳しいということの強調ではなく、なんとしても展望を切り拓きたい。個別の領域でのさまざまなとりくみで、司法の流れが変わりつつある。二十、三十年前を考えると隔世の感がある。さまざまな闘い、運動はすべてつながっている、幅広く運動をつくることが個別事件にもつながると確信している、と訴えた。
 指宿さんは、今年三月に再審開始決定(検察側の即時抗告により、現在、異議審がおこなわれている)がでた「大崎事件」について詳しくのべた。この事件は、請求人(原口アヤ子さん−一貫して犯行を否認)が、共犯者の自供のみにもとづいて、保険金目当ての殺害として起訴され、最高裁まで争ったが上告棄却され、刑期を満了してから再審請求を九七年におこなったもの。証拠開示で供述の変遷が明らかになり、死因の鑑定も最初に鑑定した鹿児島大学の教授が、事故死は想定していなかったとして、みずからの誤鑑定を認めたことなどが再審開始に結びついた。
 しかし、証拠開示、鑑定人尋問で誤鑑定を認めるなどは偶然の重なりからできたもので、重要なことは、再審段階で証拠の開示、事実調べがルール化されること。とくに証拠開示は、カナダ、イギリスなどでは、誤判の問題から義務づけられた。日本でも、検察側に他の証拠を見せても有罪立証の自信があるなら、少なくとも「証拠リスト」を明らかにすることが、最低限ルール化されねばならない。世界共通認識となってきた証拠開示を、日本の法律に組み入れる意志をもてば、立法権をもつ国会でできないことはない、とよびかけた。

持続したとりくみが

 午後からは、齋藤さんが講演。OHPを使いながら、みずからの鑑定の中身をわかりやすく解説した。また、再審で重要なことは、鑑定がでた場合、鑑定で検証する相鑑定・再鑑定制度を作ることだ、と訴えた。また、警察内部のなわばり意識、上意下達の腐敗した構造などもユーモアを交えながら語った。えん罪を生み出す構造として、警察の検察への送致主義、検察の訴状一本主義、証拠隠しなどがある、と具体的に問題点を指摘した。
 会場からは、狭山の団扇をつくり好評を得た、これまで狭山とかかわった人びとを吸収し切れていないという課題、マス・メディアの利用を考えるべき(兵庫)、高校でのビラまきでは、狭山の部落民ならやりかねないという予断が、金髪や茶髪に染めている子なら、ということと同じ構造、狭山は自分自身の問題だと訴えている(兵庫)、無罪をかちとるという思いを朗読劇にこめ練習している。練習のときに要請ハガキをみんなで書いている(滋賀)、子どもたちが節目のとりくみでがんばっている。今度、住民の会を結成する(福岡)などの実践を媒介にした発言がでた。
 最後に片岡中執が、事実調べ、証拠開示に力を注ぎたい、狭山再審実現ということの特効薬はないが、住民の会など、幅広く、草の根の持続したとりくみが、結局は大きな展望を拓いていくことにつながる、とまとめた。