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狭山事件

NEWS

石川一雄さん 新年のメッセージ
未開示証拠の存在を認めながら開示しない検察庁の対応を厳しく糾弾し、
ただちに証拠開示をさせよう

今度こそ裁判官は訴えに向き合うと信じ

 2013年は狭山事件発生から50年目にあたる。1月に第12回3者協議がひらかれ、春までに弁護団が新証拠を提出する予定で、いよいよ闘いの正念場だ。石川一雄さんの新年メッセージを掲載する。石川さんの訴えにこたえ、要請ハガキや署名運動などを展開しよう。

 私たちは新年を迎えても特別に意識することなく、ただ只管(ひたすら)に冤罪を晴らす為の活動を展開する中で、むしろ皆さん方の今後において、私石川一雄に対する支援活動にどう関わって頂けるのか、その方が気掛かりでなりませんが、取り敢えず新しい年の第一歩を踏み出すに当たり、皆さんに心から新年のおよろこびを申し上げます。

  昨年の年頭の挨拶の中では、「…今年が最大な山場」であり、私の「生死を決する年になる」と檄をとばした関係で支援者各位からも多大なご尽力を賜りましたのに、「勝利」はおろか、「再審」の目処も立てられないまま、2013年を迎えて終ったことを大変申し訳なく、済まない気持ちで一杯です。然しながら、弁護団の話によると、今月に予定される第12回の三者協議を受けて、3月頃には補充書、鑑定書が出された後は、いつ裁判所が結論を出してくるかという切迫した状況になります。そのような中で、少なくとも裁判所から勧告されたものの、未だ開示されていない残りの三項目の証拠を出させる活動を皆さん方に切にお願いする次第であります。

  これまでの再審裁判で冤罪が晴れた事件は、みな一様に検察の証拠開示に因るものであります。従って確定判決を覆す重要な証拠は検察の保管庫に眠っており、然も、膨大な未開示証拠の存在を認めながら、職責を全うしない検察側の対応を厳しく糾弾しなければなりません。ご承知の様に再審裁判では新証拠が発見された時に「実現」されるとあってみれば、尚更検察官は「無辜の救済」の再審の理念にたち、直ちに証拠を開示し、「白」「黒」をつける措置を講ずるべきでありましょう。以前、検察担当官は、「手元に証拠を集め、整理すると分量として積み上げれば2~3メートルになる」と弁護団との折衝の場で回答し、未開示証拠の存在を認めていたので、皆さん方の「証拠開示せよ」「不正義は許されない」の声を検察庁に届け、何としても開示させて頂きたく願っております。

  私も3年ほど前に、ジュネーブにある国運・規約人権委員会委員に検察側の証拠不開示について訴えてきました。委員からは再三に渡って、日本政府に対し、強く証拠開示するよう勧告されています。そもそも検察に有る証拠は公費で公的機関に因って収集された物でありますから、本来は公的財産であり、弁護側に開示されて然るべき物です。新証拠が必要とされる再審にあって、請求人の私に当然開示すべき物である筈です。にも関わらず「プライバシー保護」等を理由に開示しない訳ですが、「プライバシー」を問題にするのなら、事件当時、被差別部落に対する差別的集中見込み捜査を行い、どれほど被差別部落の人たちの人生を踏みにじったかを先ず明らかにすべきですし、そのためにも検察は全証拠を開示し、捜査過程を全て明らかにすべきです。重大な事実の隠蔽行為が国民に知れることを恐れ、証拠開示出来ないのではないか、と指弾せずにはおれません。

  「真実と正義は必ず勝つ」と信じ、声をあげてからやがて半世紀が経とうとしている現在、今度こそ裁判官は、私の訴えに耳を傾け、真摯に向き合って頂けるものと信じて居り、取り分け、私が書いた逮捕当日の「上申書」が証拠開示によって日の目を見、「筆跡の不一致」の鑑定書も提出されたことで、私にとっては、確定判決の事実認定が覆る程の新証拠として、裁判官が認めて下さると信じて疑いません。

  また今後も「犯行現場」に関する捜査書類をはじめ、ルミノール反応検査報告書、証拠の標目を記載した証拠リストなど、末開示証拠類の開示を重ねて請求して参る所存です。中でも、真実の全容が明らかにされるであろう、逮捕当日から否認し続けた間に「脅迫状」を見ながら書き写した練習用紙を開示して頂ければ、当時私が如何に無学であり、文字が書き得なかったこと、また、捜査当局の不正義が明らかになるであろうことなど裁判官に解って頂けると思いながら、その開示も積極的に求める訴えを続けていくつもりです。

  検察官は弁護団からの証拠開示請求に対し「どんな証拠か個別に特定するよう」求め、開示の必要がないとして開示拒否をしているようですが、弁護人には証拠リストすら出さず、検察手持ちの証拠が解らないからこそ全証拠の開示を求めるのであって、「特定」の仕様もないのです。故に支援者皆さんからも再度裁判官に「証拠開示を受ける機会を保障」するよう声を大にあげて頂きたいのです。

  私の完全無罪への核心は証拠を開示させる一点につきるので、このことをご理解の上行動を起こして頂きたく、心からお願いし、年頭に当たり私の不退転の決意と皆さんの更なるご協力を切望して失礼いたします。

  皆さんにとりまして今年もよき一年になりますよう念じつつ。。

2013年1月1日
石川一雄

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