<月刊「狭山差別裁判」310号/1999年10月>

鑑定人尋問を実施しなかった高木棄却決定は取消されるべきである。東京高裁第五刑事部に事実調べ−再審開始を求めよう!

狭山事件の「確定判決」となっている二審・東京高裁の寺尾判決から二十五年をむかえた。狭山事件では、寺尾判決以来じつに四半世紀の間、裁判所は、まったく事実調べをおこなっていないことになる。第二次再審請求では、再審の理念をふまえて、狭山事件について証人尋問などの事実調べをおこなうべきだと法学者も署名を提出していた。多くの国民の事実調べを求める署名も提出された。今回の棄却決定をおこなった高木裁判長は、五年あまりの間、弁護団がくりかえし鑑定人尋問やカモイの検証などを強く求めたにもかかわらず、こうした幅広い声をまったく無視して、事実調べをおこなわずに、抜き打ち的に棄却決定を強行したのである。
 たとえば、弁護団が六月十日に東京高裁に提出した新証拠である齋藤鑑定は、脅迫状や封筒に指紋がないことは石川さんが脅迫状に触れていない以外に考えられないこと、一方、自白には出てこない軍手の痕跡が見られること、そして、封筒の宛名「少時様」の一部が自白のようにボールペンではなく万年筆のインクで書かれていることを指摘し、自白と客観的事実の重大な不一致があることを明らかにした。鑑定人の齋藤さんは、二十九年指紋検査一筋というベテランの元警察鑑識課員である。その経験と専門知識にもとづく鑑定結果を高木裁判長は排斥し、わずか一カ月後に棄却決定をおこなっているのである。棄却決定は、指紋の不存在については「指紋が必ず検出されるとは限らない」としている。また、「(裁判所にある脅迫状の)現物を観察すると」という言い方で、「少時」部分もボールペンで書かれていると認定している。何ら証拠にもとづかない、裁判官の主観的な判断による認定である。さらに、指紋検査の薬品によって、封筒宛名の「少時様」のうち「様」だけがにじんでいるという違いを「薬品のかかり具合」によるものとも言っている。しかし、鑑定作業の実際も知らない裁判官が、長年指紋検査をおこなってきた専門家の意見と弁護側の主張を十分に聞きもしないで、一方的に決めつけた判断によってしりぞけることはとうてい公正・公平な審理を尽くしたとは言えない。なぜ、このように決めつける前に専門家の証人尋問をしないのか。だれもがこのような裁判所のやり方に疑問と批判を持つであろう。日弁連が再審問題についてまとめた『続・再審』(日本評論社 一九八六年)は「対立する鑑定のいずれに証明力を認めるかを決するためには、また少なくとも(弁護側の)再鑑定の価値が低いと言うためには、再鑑定人の尋問は不可欠である」として、狭山事件における事実調べの必要性を指摘している。事実調べも証拠開示も保証せず、審理手続きにおいても内容においても、一方的で誤った判断によって再審請求を棄却した高木決定は取り消されなければならない。
 弁護団は、異議審を担当する東京高裁第五刑事部の高橋裁判長とも面会し、事実調べと再審開始を強く求めることにしている。新しい東京高検の担当検事との証拠開示の折衝も予定している。東京高裁第五刑事部・高橋省吾裁判長、東京高検の安達敏男検事にたいして、事実調べ−再審開始、証拠開示を求める要請ハガキ運動をすすめよう!


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