<月刊「狭山差別裁判」312号/1999年12月>

棄却批判の市民の声ひろげ異議審闘争に勝利しよう! 
国連勧告を訴え事実調べ・証拠開示の実現をかちとろう!

世界人権宣言が国連で採択されて五十一年。世界人権宣言を国際条約とした国際人権B規約を日本が批准、締約国となって二十年が過ぎている。昨年十一月、国際人権B規約委員会は、日本政府の報告書の審査をおこない、最終所見を発表した。そのなかで、多くの改善勧告をおこなっている。そのなかの一つが弁護側への証拠開示の保障である。
 規約人権委員会の勧告ではまた、刑事裁判の有罪判決の多数が自白にもとづいていることに強い懸念を示され、自白が強制的に引き出される可能性を排除するために、代用監獄における取り調べが厳格に監視されること、テープ録音など電気的な方法によって記録されるべきだと強い勧告がなされている。国連勧告は、虚偽の自白が強制・誘導によって引き出される危険性を、人権擁護の観点から強く意識していると言える。まさに、石川一雄さんの自白も警察の代用監獄での一カ月におよぶ長期勾留・取り調べの後に取られたものである。しかも、弁護人の接見が制限・禁止されたなかで、片手錠をはめられての取り調べである。しかし、寺尾判決は自白の任意性に疑いはないと弁護側の主張をしりぞけた。今回の棄却決定にも、自白が本当に強制・誘導ではないのか、無実の人の虚偽の自白ではないのかという危険性の意識も、厳密に検討しようという姿勢はまったく見られない。棄却決定は、自白と客観的事実との食い違いを、ことごとく可能性や「こうも言える」という言い方でごまかしているのである。そもそも、刑事裁判の鉄則である「疑わしきは被告人の利益に」「無罪の発見」という姿勢が高木決定にはまったくないと言わねばならない。
 いま、警察の一連の不祥事が報じられているが、警察が自分たちの威信を守るために、証拠隠しや証拠ねつ造、調書偽造まですること、しかも組織ぐるみでやるということをわたしたちは見なければならないだろう。つまり、警察の取り調べで取得された自白や作成した鑑定を──警察が組織として窮地に追い込まれたような場合はとくに──きびしくチェックしなければ
ならないことを教えているのである。狭山事件当時、犯人を取り逃がした埼玉県警は、国会で追及されるほどに大きな非難をあび、警察庁長官が辞任するまでにいたっている。まさに、そこに見込み捜査、強引な逮捕、取り調べがおこなわれ、えん罪が引き起こされた背景がある。弁護団が指摘しているように、自白にも警察の鑑定にも数多くの疑うべき問題点があり、裁判所は、もっと厳格な姿勢で狭山事件における警察の捜査、逮捕や取り調べ、あるいは警察の作成した鑑定の信頼性をチェックしなければならないはずなのだ。異議審において、東京高裁があらためて、国連の勧告、国際的な人権基準をふまえて、基本的な問題点から狭山事件を洗い直すべきなのである。
 弁護団は、異議審を担当する東京高裁第五刑事部の高橋裁判長とも面会し、事実調べと再審開始を求めるとともに、来年春にむけて、補充書を提出することを伝えている。われわれは、棄却決定の徹底した批判、事実調べも証拠開示もやらない裁判所の不当な姿勢への批判をさらに市民に広げ、司法全体のありたを問いながら、異議審闘争の勝利をかちとろう。


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