<月刊「狭山差別裁判」306号/1999年6月>
東京高検はただちに証拠リストの開示をおこなえ!
国民の人権を侵害する盗聴法・組対法に反対しよう!
一九九八年に国会上程されたものの人権侵害の危険性が指摘され、廃案になりかけた盗聴法(通信傍受法)・組織的犯罪対策法を強行に成立させようという動きがにわかに活発になっている。盗聴法はアメリカの歴史と現状が示すように、いったんできてしまうと、歯止めなくエスカレートするものであることを忘れてはならない。さまざまな人権団体、労働組合や市民運動団体にむけられるだけでなく、ふつうの市民がすべて対象となって、その方法も受話器をおいたままでも会話が盗聴できるようにするなど、どんどんエスカレートする。さらに政治家にむけられることで、政治が一部の権力者によってコントロールされる事態をまねく。国民の人権・プライバシーを侵害し、狭山闘争、部落解放運動、あらゆる市民運動・人権運動を弾圧する道具になる危険な法案である。また、狭山事件における警察の被差別部落への見込み捜査に見られるように、警察の見込み捜査、自白中心捜査、代用監獄といった問題がある現状では盗聴の合法化はさらにえん罪を生むだけである。盗聴法を強行にすすめようとする法務省の動きは司法の反動化のあらわれであり、わたしたちは、狭山の闘いとあわせて、多くの法学者や弁護士をはじめ幅広い国民運動で盗聴法や組織的犯罪対策法に反対していかなければならない。
弁護団は引き続き新証拠の準備をすすめ、東京高裁・高木裁判長に、さらに事実調べ-再審開始をせまることにしている。高木裁判長が事実調べをおこない再審を開始するまで、わたしたちは闘いをゆるめることはできない。ことし十月には寺尾判決から二十五年になるが、四半世紀もの間、まったく事実調べがおこなわれていない。この不当性を訴え、カモイの検証、筆跡鑑定などの鑑定人尋問などの事実調べと証拠リストの開示命令を強く求めて、要請ハガキを高木裁判長にどんどん送ろう!
証拠開示については東京高検の担当検事との折衝で、相当数の未開示証拠と証拠のリストが検察官の手元にあることが確認されている。検察官が、証拠を特定して開示請求せよと言うなら、まず証拠リストを開示すべきである。「弁護側が存在すら知らない証拠はどうやって入手・利用できるのか」という国連・規約人権委員会の委員の指摘は、きわめて当を得ている。東京高検が、手元にたくさんの未開示資料を持ちながら、証拠リストも開示せず、どんな証拠があるのかさえ明らかにしないというのはだれが考えても不当であろう。証拠リストの開示は当然である。昨年十一月に国連の規約人権委員会は「関連するあらゆる証拠資料に弁護側がアクセスできるよう実務および法律を改めることを勧告」した。平野龍一・東京大学名誉教授は、国連から証拠開示の保障をふくむ刑事手続き改革のきびしい勧告を受けたことをとりあげて、「国連の勧告をいつまでも放置するわけにはいかない」と指摘している。こうした法学者の証拠開示の現状を改革すべきとの論調は国連勧告を受けてさらに強くなっている。わたしたちが狭山事件で求めてきた証拠開示の要求は確実に大きな声となっているのである。弁護団は近く、この四月に交代した新しい担当検察官との折衝をおこなう。さらに闘いを強化し、証拠リストの開示を実現しよう!
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