<月刊「狭山差別裁判」309号/1999年9月>
東京高裁第五刑事部は棄却決定を取消し再審を開始せよ!
司法反動を許さない広範な闘いで異議審闘争に勝利しよう!
東京高裁・高木裁判長による不当な再審棄却決定の取消しと再審開始を求めて、弁護団がおこなった異議申立の審理の担当は東京高裁第5刑事部(高橋省吾裁判長)に決まった。わたしたちは、高木棄却決定のデタラメさと不当性を徹底して国民に明らかにし、東京高裁第五刑事部にたいして、事実調べと証拠開示を保障し、棄却決定の取消しと再審開始を強く求めて、これまで以上の闘いを再構築しなければならない。
高木棄却決定の不当性の第一は、事実調べをまったくおこなわなかったことである。とくに、第2次再審請求では、数多くの専門家による鑑定書、意見書が新証拠として提出された。国語学者の大野晉・学習院大学名誉教授の筆跡鑑定など、いずれも、長年の研究と専門知識にもとづく科学的な分析・検討の結果、石川一雄さんが脅迫状を書いたのではない、自白には重大な矛盾があるということを明らかにしていたのであった。
かつて最高裁が事実審理をおこなわず、狭山事件の上告を棄却したとき、読売新聞の社説は「弁論を開かないため、反論のない一方的な証拠の判断に終わった」と批判した。まさに、同じ批判が今回の高木棄却決定にあてはまる。大野鑑定が当時の石川さんには脅迫状は書けなかったと指摘したのにたいして、棄却決定は、大野鑑定人の証人尋問もやらず、具体的な国語能力の検討も一切無視して、独断的に、「(石川さんには)ある程度の国語知識があった」「ある程度の漢字の習得をしていた」として、弁護側の主張をしりぞけている。しかし、大野鑑定人は、国語学者として筆記能力や文章能力を詳細に検討し、石川さんと脅迫状の筆者との間には、明らかな国語能力の格差が見られることを明らかにしているのである。棄却決定のような抽象的、一般的な言い方、「ある程度の」などという言葉でごまかすことなど絶対に許されない。このような裁判所の判断をだれが納得できるであろうか。まさに「反論のない一方的な証拠判断」すなわち予断にみちた誤った証拠評価ではないか。
八月九日には、参議院法務委員会で盗聴法案が強行「採決」された。民主主義のルールを尊重し、「通信の秘密」という憲法に違反する法案を慎重に審議したとはとうてい言えない暴挙であり、わたしたちは、このような反動化の流れに断固反対していかなければならない。高木棄却決定は、こうした反動化の流れのなかで、警察・検察・裁判所の威信を揺るがすことになる、えん罪・誤判の存在を認めることはできないという政治的な意図をもって、この時期に出されたとさえ言えるだろう。
しかし一方で、昨年の11月には、国連の国際人権B規約委員会から、証拠開示の保障、テープ録音などによる警察の取り調べの可視化、代用監獄の廃止、裁判官や検察官の人権教育の必要性などの勧告が出され、法学者からも司法改革の中で積極的に取り組むべきだと言われているときでもある。わたしたちは、高木棄却決定の批判とともに、いまの日本の裁判(官)のありかた、司法の現状はこれでいいのかという視点で幅広い共闘や住民の会の運動を広げて、司法反動化に反対する広範な運動と結びつけて、狭山闘争をすすめる必要がある。
棄却決定の徹底した批判学習をすすめ、司法反動を許さぬ広範な闘いで、異議審において事実調べ・全証拠開示を実現し、棄却決定の取消しと再審開始をかちとろう!
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