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<月刊「狭山差別裁判」322号/2000年10月>

東京高裁は新証拠の鑑定人尋問をおこなえ
証拠開示、事実調べかちとり異議審闘争に勝利しよう

狭山弁護団は、9月26日に足跡に関する新鑑定と補充書を提出した。寺尾判決は、埼玉県警の関根・岸田鑑定を根拠に、佐野屋脇で発見された現場足跡が石川さんの家から押収された地下足袋によって印象されたものであるとして、有罪証拠の一つとした。関根・岸田鑑定は、足跡の大きさが同じだとしたが、昨年の東京高裁・高木裁判長による再審棄却決定は、足跡の大きさの違いを認めたうえで、泥がついていたから地下足袋よりも大きく足跡が印象されたとごまかした。そして、高木・棄却決定が、最後のよりどころにしたのが、現場足跡の「破損痕」である。押収地下足袋のゴムのはがれた破損箇所の痕跡が現場足跡にあり、それが一致するというのである。

 今回提出された山口・鈴木鑑定は、佐野屋脇で発見された現場足跡の石膏型を3次元スキャナという最新鋭の立体形状読み取り機を用いて、はじめて現場足跡の形状全体を立体的にくわしく撮影・計測した。その結果、多数の隆起や外縁で横に張り出した部分を発見し、現場足跡はきわめて不明瞭で、押収地下足袋との類似性、とくに「破損痕」の一致といったことを論じる証拠価値がないと結論づけている。

 また、関根・岸田鑑定は、現場足跡と押収地下足袋で作られた対照用の足跡の写真を撮って、白黒の平面写真の上で長さを測るなどして、「破損痕」箇所が一致するとしているが、山口・鈴木鑑定は、このような幅と長さだけで高さ(奥行き)を無視した関根・岸田鑑定の比較方法じたいに、そもそも問題があり、形状を見誤る危険性があることを指摘している。そのうえで、関根・岸田鑑定が写真上で一致したとしている足跡上の3角形が実際の3次元形状では異なる3角形であることを明らかにしている。関根・岸田鑑定のいう「破損痕」の一致なるものがインチキであり、信用できないことが暴露されたのだ。

 現場足跡に押収地下足袋に見られる破損の痕跡があり、その「形状、大きさ、印象部位がまことによく合致している」として証拠価値を認めた棄却決定の判断の誤りが、山口・鈴木鑑定によって科学的に明らかにされたといえよう。

 弁護団は9月29日に、東京高裁第五刑事部の高橋裁判長と面会し、山口・鈴木鑑定の鑑定人尋問を強く求めた。異議審段階で、これで、齋藤第2鑑定、神戸2次鑑定、半沢鑑定とあわせて4通の新鑑定が提出されている。いずれも、昨年の棄却決定の誤りを鋭く指摘している。東京高裁は、すみやかに、鑑定人尋問などの事実調べをおこない、再審を開始すべきである。

 新証拠の提出を受けて、異議審の闘いは大きなヤマ場をむかえる。わたしたちは事実調べを求める闘いの強化をはからなければならない。きたる10月31日には寺尾判決から26年をむかえて、異議審勝利にむけた中央集会を開催するが、各地においても取り組みの強化をはかろう。異議審で提出された四通の新鑑定をはじめ、多数の新証拠が出されているにもかかわらず、この26年間まったく事実調べがおこなわれていない不当性を徹底して暴露しよう。また、2~3メートルもの未開示証拠がありながらおまだまったく証拠開示がおこなわれていない。されない不公平・不当性を徹底して訴えよう。新証拠の学習を深め、緊迫感をもちながら、さらに住民の会結成やハガキ運動などの取り組みを徹底してすすめよう。

月刊狭山差別裁判題字

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