<月刊「狭山差別裁判」323号/2000年11月>
東京高検の不当な証拠不開示を断じて許すな
東京高裁は新鑑定についての鑑定人尋問をおこなえ
さる10月26日、弁護団は東京高検の江幡豊秋・検事と証拠開示の折衝をおこなった。弁護団は、2メートル以上という検察官手持ち証拠の開示を求めたが、江幡検事は、証拠リストは開示できないとし、その他の弁護団が開示を求めた証拠についても、まったく開示をおこなわなかった。
一昨年には、弁護側への証拠開示を保障すべきだという国連・規約人権委員会の勧告が出されている。多くの国で証拠開示義務化のルールが確立されており、国際的には証拠開示保障は常識なのである。また、法学者や日弁連は従来から誤判防止のためにも事前の全面的な証拠開示を提起している。司法制度改革審議会でも、証拠開示拡充にむけて議論がすすめられている。東京高検の姿勢はこうした証拠開示拡充、保障にむけた動きや世論に逆行し、市民常識としても不当なものといわねばならない。そもそも、新証拠を必要とする再審請求において検察官手持ち証拠の開示は公平・公正な手続きを保障するために不可欠である。狭山事件は、事件後37年も経過した確定後の再審事件であり、これまで証拠開示によってプライバシーの問題が生じたこともない。少なくとも、手持ち証拠の一覧である証拠リストの開示は当然といわねばならない。
東京高検の不当な証拠不開示は断じて許されない。わたしたちは、隠された2メートルもの証拠の開示にむけて断固として闘わなければならない。
狭山弁護団は、9月末に足跡についての新鑑定を提出し、鑑定人尋問を強く求めている。今回提出された山口・鈴木鑑定は、寺尾判決が有罪証拠の一つとした現場足跡には、地下足袋の特徴を論じ、押収地下足袋との一致を言えるだけの証拠価値がないこと、そのよりどころにした関根・岸田鑑定の誤りを科学的に明らかにした。また、弁護団がことし3月に提出した3通の鑑定は、脅迫状作成自白の矛盾、筆跡の違いという点から脅迫状と石川さんの結びつきが完全に絶たれていることを明らかにしている。そして、4通の鑑定はいずれも、昨年の高木裁判長による再審棄却決定の誤りを明らかにしているのである。
東京高裁第5刑事部の高橋裁判長は、これら専門家による四通もの新鑑定について、第2次再審でこれまで提出された新証拠とあわせて、公平・公正に十分な評価、検討をおこなうために、ただちに鑑定人尋問をおこなうべきである。
新証拠の提出を受けて、東京高裁がいつ判断を出してもおかしくない段階にはいったといわねばならない。わたしたちは、事実調べと証拠開示を強く求めて闘いをさらに強化しなければならない。この10・31までに、ついに住民の会は95団体にまで増えた。昨年の棄却のときに40数団体であったものが倍以上になっているのである。さらに、住民の会を各地で結成し、棄却決定にたいする市民的な反撃の輪をさらに広げ、あらゆる方法を駆使して狭山再審を訴えよう。とくに、検察官がたくさんの証拠を開示しないままであることの不当性を国連へ訴えるなど、国際的にも狭山を訴えていこう。
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