<月刊「狭山差別裁判」317号/2000年5月> 新証拠、補充書を武器に異議審闘争を全力で闘おう さる3月31日、狭山弁護団は、東京高裁第五刑事部の高橋省吾裁判長に面会し、異議申立補充書および新証拠を提出、事実調べー再審開始を強く求めた。今回提出された新証拠のうち、元警察鑑識課員で30年近くも指紋検査に従事した齋藤保さんの第二鑑定は、脅迫状封筒に万年筆で書かれインク消しで抹消された筆圧痕があることや文字の滲みから封筒が事件前に水濡れしていたこと、あて名も犯行前に万年筆で書かれていることなどを指摘し、犯行後にあて名を訂正したとする寺尾判決の認定をつきくずすものとなっている。また、半沢鑑定は、類似点のみあげて相異点を無視している棄却決定の誤りを批判するとともに、カタカナの「エ」を書く石川さんの書き癖が脅迫状には見られないことや脅迫状の「な」「す」などに見られる連筆が石川さんには見られないという違いをすべての筆跡について統計的に検討して「安定した相異性」であることを明らかにし、異筆を証明している。さらに、元京都府警の文書鑑定主任による神戸第2鑑定は、有罪の根拠とされた筆跡3鑑定が、「りぼん」を手本にしたという点を考慮していない点で適格性がないと指摘するとともに、当て字や筆順などの分析から脅迫状の作為性を指摘し、その点からも脅迫状は石川さんが書いたものとは言えないことを明らかにしている。いずれも、狭山事件の唯一の物証であり寺尾判決が証拠の主軸とした脅迫状と石川さんの結びつきを断つものである。東京高裁の高橋裁判長は、ただちに鑑定人尋問をおこない、これら新証拠をふくめて、すべての証拠を総合的に評価し、石川さんが脅迫状を書いたとすることに合理的な疑いがないのかを真剣に検討すべきである。わたしたちも、脅迫状に焦点をあて、筆跡の違い、指紋の不存在、自白の不自然さや軍手痕などのさまざまな疑問をとりあげ、石川さんの無実を訴えよう。 月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先 |