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<月刊「狭山差別裁判」320号/2000年8月>

市民に真相を訴え住民の会をひろげよう
 司法改革と結びつけ証拠開示を訴えよう

  弁護団は、8月早々に、東京高裁第五刑事部の高橋裁判長と面会し、9月に足跡に関する新しい鑑定書と補充書を提出することを伝えるとともに、事実調べと再審開始を強く求める予定である。さらに、証拠開示についても、この間の経過を伝えるとともに、開示勧告など裁判所が証拠開示を保障するよう強く求めることにしている。とくに、証拠開示については、担当の検察官が昨年四月からこの1年あまりのあいだに五回も交代しており、弁護団との折衝がすすんでいない。検察官の手元に2メートルもの未開示の証拠があることが昨年3月末にあきらかになっているにもかかわらず、まったく証拠開示がおこなわれておらず、しかも、証拠開示がおこなわれないまま昨年7月に再審請求が棄却されているのである。これほど、不公平で不公正な裁判はないというべきである。現行の再審制度は、新証拠の提出を条件としているのであるから、再審請求を審理する裁判所としても、検察官手持ち証拠の開示を保障すべきである。
検察官が多数の未開示証拠を持っていることははっきりしているのである。
 弁護団は、9月以降に担当の江幡検事とも再度、折衝をおこない、強く証拠開示を求めることにしている。新証拠の提出、検察官との証拠開示の折衝を受けて、国会もはじまるこの9月以降、わたしたちは最大限の取り組み強化をはからなければならない。
 この7月から8月にかけて、全国で住民の会の結成があいついでおり、86団体になろうとしている。結成が準備されているところも、数多くあり、さらに各地で市民的なひろがりをすすめることが重要である。この10・31には百を越える住民の会が結成されることをめざして、積極的にとりくもう。
 松本サリン事件や愛媛の誤認逮捕起訴罪事件のように、いまでもえん罪は跡を絶っていないし、市民にとっても無縁ではない。いま、司法改革が言われるなかで、わたしたちは、狭山事件のような冤罪・誤判をなくし、昨年の再審棄却に見られるような不当な裁判を変えていくためにどのような司法改革が必要なのかを考えなければならない。先般、福岡で開かれた司法改革審議会の地方公聴会で、免田事件の再審を開始した山本茂・元福岡高裁判事は、「捜査段階での自白をたやすく信じて、これを覆すのは容易ではない」と自白に依存したえん罪・誤判に警鐘を鳴らし、市民と常に接している弁護士経験を積んだ上で裁判官になるべきだと述べたという。弁護士経験のある法律家から裁判官を選ぶ制度が法曹一元といわれるものである。先般開かれたサミットのG8といわれる国で、法曹一元も陪審・参審もない国は日本だけであるという指摘もある。市民参加と人権を柱とした司法改革という点で、日本は「先進国」どころか、遅れている国なのである。証拠開示の保障や代用監獄の廃止、裁判官の人権教育など国連の勧告はいまだに実現していない。それどころか、狭山では検察官が証拠隠しを続けている。人権からかけ離れた日本の司法の現状をもっとも象徴しているのが狭山再審棄却決定であり、証拠開示を拒否しつづける検察官である。司法における市民参加と人権感覚の遅れている国が日本であるという自覚をもちながら、これからの狭山の闘いをおしすすめなければならない。


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