<月刊「狭山差別裁判」327号/2001年3月>

東京高裁は再審の理念に従って狭山事件の再審を開始せよ
東京高裁、東京高検に要請ハガキを集中しよう

 狭山弁護団は、さる二月十四日に東京高裁第五刑事部の高橋裁判長と面会し、昨年末に提出した小畠意見書および齋藤鑑定で指摘された新事実について説明、再審開始を求めた。弁護団は、この異議審の一年半の間に、脅迫状に関わる新たな疑問を明らかにした齋藤第二鑑定および小畠意見書、筆跡の違いをあきらかにした神戸二次鑑定、半沢鑑定、足跡に関する山口・鈴木鑑定、山口・鈴木補足意見書と六通もの新鑑定を提出している。これら新鑑定は棄却決定の誤りを明らかにするとともに、確定判決となっている寺尾判決の根幹を揺るがしている。寺尾判決は、石川さんと犯行を結びつける客観的証拠として、主軸として脅迫状をあげ、つぎに足跡をあげているからだ。脅迫状にかかわる自白と客観的事実の食い違い、自白では触れられていない事実の存在は、筆跡の明らかな違いとあわせて、脅迫状と石川さんの結びつきを完全に断っている。さらに、山口・鈴木鑑定によって、身代金受け渡し現場に残された足跡が石川さん宅の地下足袋と一致するとした警察鑑定の誤りが明らかになっている。
 再審請求においては、確定した有罪判決がどのような証拠にもとづいているかを分析し、その旧証拠を再評価するとともに、新証拠とあわせて総合的に評価して、確定判決に合理的疑いが生じていないかを判断すべきとされている。弁護団は、棄却決定がこうした確定判決の証拠構造分析をおこなわず、新証拠の評価を誤ったものであることを指摘し、異議審において、事実調べをおこない、棄却決定を取消して再審を開始するよう求めているのだ。
 また、部落差別の現実がえん罪をひきおこしたこと、別件逮捕、代用監獄での長期の取り調べ、弁護士との接見禁止、手錠をかけての取り調べなど、狭山事件の捜査の過程にあるさまざまな問題点を確定判決や棄却決定はまったく見ていないこと、そのことが自白や証拠の評価を誤らせることになっていることも指摘する。狭山事件が、部落差別の現実のなかで、犯人逮捕に失敗し、きびしい世論の非難を浴びて追い詰められた警察の人権を無視した強引な捜査によってひきおこされたえん罪であることを原点にかえって見つめる必要がある。確定判決が証拠としてあげている筆跡鑑定、足跡鑑定、死体鑑定などすべて警察の鑑定であり、狭山事件の場合、旧証拠を再評価するとき、捜査にたいする批判的な再検証は不可欠なのである。
 さる一月、埼玉県警が十八歳の少年を誤認逮捕したことが報じられた。県警がおこなった指紋鑑定が誤っていたという。少年は昨年八月に逮捕され犯行を認める「自白」をし、家裁で保護観察処分を受けたが、東京高裁で差し戻しが認められ、さる二月一日にやっと不処分決定を受けた。警察の指紋鑑定が誤っていたということと同時に、この少年が虚偽の自白をさせられていたことを見逃してはならない。この少年は現場に残っていた指紋が一致したと言われウソの自白をしたという。こうした自白においこむやりかたも石川さんと同じだ。警察の「えん罪の作り方」は石川さんのときと変わっていないことを示している。警察は、少年を逮捕後にも指紋鑑定をおこなったが、それも「指紋一致」という誤鑑定だったという。犯人にしたてあげるために「指紋は一致した」という鑑定を県警が作ったと言わざるをえない。捜査当局が作成する鑑定の信用性、作為性をいかにきびしい目で見なければならないかを示しているといえないだろうか。
 この三月は緊迫感をもって、再審開始と証拠開示を求めるハガキを東京高裁の高橋裁判長と東京高検の杉本検事に集中しよう。

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