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<月刊「狭山差別裁判」328号/2001年4月>

市民参加、証拠開示拡充で刑事司法を変えよう
狭山再審と司法改革を結びつけて闘おう

 狭山弁護団は、この四月に新証拠を提出するとともに、五月には補充書を提出、東京高裁第五刑事部の高橋裁判長に再審開始を強くせまることにしている。脅迫状、足跡という確定判決を支えた証拠がくずれており、再審開始は避けられない。異議審が大詰めをむかえているいま、新証拠を中心に狭山事件の真相を徹底して訴え東京高裁に再審開始を求める声を集中しよう。
 弁護団の再三にわたる要求にもかかわらず、まったく証拠開示がおこなわれないまま、さる二月にまた東京高検の担当検事が変わった。弁護団は二月十四日、東京高裁に刑事訴訟法二七九条に基づく照会請求書を提出、検察官の持つ証拠リストを提出させるよう裁判所に求めている。新証拠の提出を要件とする再審請求で、弁護団が、まず検察官手持ち資料のリストの中味を知りたいと求めるのは誰が考えても当然ではないか。そもそも、検察官手持ち証拠は検察官の独占物ではなく公共の財産であるはずだ。国連・規約人権委員会の勧告を見てもわかるように、証拠開示は国際的な流れであることを訴え、真実究明と正義を守るべき検察官が手持ち資料を再審請求人に開示することは義務であることを松田検事、高橋裁判長に強く求めていこう。
 司法制度改革審議会では、証拠開示拡充にむけたルール化など刑事司法改革が審議されている。最終答申はこの六月にもまとめられる予定だが、わたしたちは、市民の立場から誤判・冤罪の防止と人権擁護という視点にたった司法改革を審議会に求めていく必要がある。国民の司法参加や「法曹一元」の実現、そしてとくに、狭山事件の再審の現状もふまえて、刑事司法の改革において、証拠開示の拡充、とりわけ再審請求における検察官手持ち全資料の開示義務を確立するよう強く求めていこう。検察官が証拠を隠しているなどということは市民常識として許されないという声をもっと届けていこう。
 司法改革審議会は、これまでのえん罪・誤判の実態を十分にふまえ、それを教訓化した刑事司法の改革を提言しなければならない。幅広い国民の声を聞きながら、政府が率先して徹底した誤判原因の究明をおこない、えん罪を教訓化して、証拠開示の立法化を確立したイギリスやカナダの例に学ぶべきである。
 また、市民が裁判に参加する「裁判員制度」の導入も検討されている。「疑わしきは被告人の利益に」「無罪推定原則」が刑事裁判の鉄則であることがあらためて徹底して確認される必要があるだろうし、そのためにも、人権教育、国際人権についての教育がますます重要になる。わたしたちは、何のための、誰のための司法改革なのかを再確認し、市民常識の通じる裁判、実質をともなった公正・公平さが保証された司法の実現をめざして、継続的に司法改革を市民の手ですすめなければならない。狭山闘争を闘いつづけ、えん罪の恐怖、人権侵害への怒り、司法に裏切られつづけた石川さんの叫びをよく知っているわたしたちは、司法改革の動きに注目し、もっと声をあげていかなければならない。
 異議審の大詰めをむかえて、この五月には、中央集会を開催するとともに、狭山現地で住民の会の全国交流会をおこなう。さらに、各地で住民の会結成を推進し、市民的な狭山再審の広がりをもっと作り出そう。市民の声で狭山再審と刑事司法の改革を実現しよう。

月刊狭山差別裁判題字

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