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<月刊「狭山差別裁判」331号/2001年7月>

異議審最大の山場を全力で闘おう
無実の新証拠を広く市民に訴えよう

 狭山弁護団は、五月三十一日、指紋鑑定士の齋藤保さんによる指紋検出実験鑑定書を提出、六月四日には異議申立補充書を東京高裁第五刑事部に提出した。弁護団が五月一日に狭山現地でおこなった指紋検出実験で、自白のような脅迫状作成をおこなった場合、脅迫状・封筒に多数の指紋が付着、検出されることが確認された。鑑定結果を読むと、とくに、脅迫状・封筒といった紙類は指紋が付着・検出されやすいこともよくわかる。再審棄却決定がいうような「鮮明な指紋が必ず検出されるとは限らない」などという一般論は許されないのである。自白の内容、紙という検出物件の特性など具体的な条件のもとで、脅迫状から石川さんの指紋が検出されなかったこと、指紋が七個しか検出されず、そのうち二個が被害者の兄と警察官の指紋であったという実際の検出結果がありうるのか、自白と矛盾していないのかを正当に評価すべきなのである。
 弁護団の異議申立補充書が指摘するように、免田事件の再審開始決定や再審無罪判決、鹿児島夫婦殺害事件の最高裁判決などのように、自白通りならあるべき指紋が存在しないことを、自白に裏付けがなく、信用できないことを示すものとして、正当に評価した判例もある。脅迫状・封筒に石川さんの指紋がないことは石川さんがこれらに触れていないこと以外に考えられないということは市民の常識的な判断であろう。
 東京高裁第五刑事部の高橋裁判長が、石川さんの指紋がないことを公正・正当に評価し、市民常識の通じる判断をおこなうよう強く求めたい。そして、石川さんの指紋がないことと、手袋の痕跡が存在すること、万年筆で書かれ消された文字が多数存在すること、筆跡に相違があること、当時の石川さんに脅迫状が書けたとすることに合理的疑いがあること等を総合的に評価すべきである。自白が完全に崩壊しており、唯一の客観的物証である脅迫状が石川さんとまったく結びつかないことは明らかであり、棄却決定取り消しー再審開始は不可避である。
 補充書提出期限を六月四日と区切った高橋裁判長の言い方からして判断の段階にはいったと考えなければならない。弁護団は、刑事訴訟法二七九条に基づく証拠リストの照会請求について折衝を申し入れ、証拠開示をせまっている。異議審はいま最大の山場である。全力をあげた闘いを各地で展開しなければならない。中央本部では、齋藤実験鑑定をはじめ異議審における新証拠を解説したビデオおよびリーフレットを作成した。七月二日には、狭山事件の再審を求める文化人の会を中心にした狭山事件の証拠開示を求める意見広告が「毎日新聞」全国版に掲載される。いまこそ、これらを徹底して活用して各地で学習、教宣を強化し新鑑定についての鑑定人尋問、再審開始と証拠開示を求める大キャンペーンを全国で展開することが重要である。
 この間、警察官の不祥事にひきつづき、検察官、裁判官の不祥事があいつぎ国民の司法にたいする不信が広がっている。国民の司法への信頼回復を求めようというなら、公正さ、公平さこそ保障し実現すべきであり、狭山事件の再審請求において、市民が納得する裁判、数々の疑問、新鑑定についての事実調べ、検察官が隠し持つ全証拠の開示こそが必要だといわねばならない。東京高裁、東京高検に対する要請ハガキをどんどん送り、こうした市民の声を届けよう。

月刊狭山差別裁判題字

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