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<月刊「狭山差別裁判」334号/2001年10月>

東京高裁は鑑定人尋問、証拠開示をおこない 
市民常識にたった公正・公平な判断をおこなえ

 現地調査に行っただれもが感じることだが、石川さんの自白のように、昼間ブラブラ歩いていて偶然出会った見知らぬ女子高校生をとっさに誘拐することを決意したなどということは常識的に不自然である。身代金目的の誘拐を計画していたのなら、家の経済状況も知っており、金を取ることができるという見込みをもっておこなうのが普通であろう。それも小さな子どもではなくて女学生が相手である。親の名前や住所をどうやって知るつもりだったのか、そもそも連れ去れると考えたのか、どこへ監禁しておくつもりだったのかなど、どう考えても不自然である。つまり被害者と何の面識もない石川さんを犯人だとするストーリーは常識的におかしいということなのである。
 また、石川さんの自白のように、高校一年生でスポーツや学校の活動に活発だった善枝さんがいきなり自転車を止められ、「用がある」と言われただけで、何の抵抗もなく見知らぬ若い男についていったということも常識的に考えられないことだ。確定判決となっている二審・東京高裁の寺尾判決は、「予期せぬことに遭遇し、ずるずるとついていったことも考えられる」というが、これこそ可能性や勝手な推測で常識的な疑問を強引にごまかしたものというほかない。
 このきわめて市民常識的、素朴な疑問を解明する事実が異議審になって、元警察鑑識課員で長年鑑識捜査にたずさわってきた齋藤保・指紋鑑定士によってあきらかにされた。狭山事件で犯人の残した脅迫状の封筒の「中田江さく」の文字は犯行日より以前に書かれたものであるということである。つまり、真犯人は被害者を知っている人物であるということが脅迫状それじたいからわかったのである。
 偶然出会った、何の面識もない、しかも小さな子どもではなく女学生をとっさに誘拐することを決めた、そして、その女学生はだまって雑木林の中までついてきたという自白のあまりの不自然さは、真犯人は被害者を知っている人物であるという新事実によって氷解する。脅迫状は石川さんと結びつかず、犯人は石川さんではありえないということである。
 脅迫状・封筒に石川さんの指紋がないのはおかしいという常識的な疑問が、脅迫状・封筒には二種類の軍手痕があり犯人は手袋をしていたと考えられるという齋藤鑑定人の鑑定結果と整合しているのと同じである。
 東京高裁第五刑事部の高橋裁判長はこの異議審であきらかになった新証拠を判断しなければならないが、再審棄却決定のように「指紋は必ず検出されるとは限らない」といった何ら国民を納得させられない言い方でごまかすことは許されない。市民の誰もが感じる常識的なおかしさと犯罪鑑識の専門家によって証拠上明かになってきた新事実を総合的に見なければならない。
 ひきつづき状況は緊迫しており、徹底して教宣活動を強化する必要がある。「無実の叫び」「無実の叫び2」「ザ・スクープ」といったビデオやカラーリーフレットなどを十分活用し、この一〇・三一にむけて各地で決起集会、真相報告集会を開いたり、街頭宣伝にとりくもう。この九月には二つの住民の会が結成された。さらに全国各地で住民の会を結成しよう。東京高裁、東京高検への要請ハガキを集中し、高橋裁判長に、鑑定人尋問、再審開始と証拠リスト開示命令を強く求めよう。

月刊狭山差別裁判題字

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