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<月刊「狭山差別裁判」338号/2002年2月>

東京高裁・高橋裁判長による異議申立棄却決定に抗議する
最高裁は、再審棄却決定・異議申立棄却決定をただちに取消せ

 東京高裁第五刑事部の高橋裁判長が一月二十三日付けで抜き打ち的に異議申立を棄却する決定をおこなった。今回も、決定がわかったのは翌日二十四日の午後であった。何の予告もなく決定を送ってきただけである。二十五日には近畿・東海ブロックの各府県連による要請行動を予定しており、決定前日には、地元の埼玉県連が住民の会・共闘団体とともに、連続要請行動を開始し、ちょうど入間地区住民の会と兄の六造さん、姉のウメ子さんらが高裁、高検へ要請に行ったところだった。要請行動の合間に一方的に決定を送りつけるという高裁のやりかたに国民の声に背を向け、反論を封じようとする裁判所の姿、民衆司法でなく官僚司法と言われる実態がまざまざとあらわれている。決定は、ざっと八万字ほどのもので、ほとんどの論点で東京高裁第四刑事部・高木裁判長による再審請求棄却決定と同じ文言をくりかえしているだけである。高木決定を批判し、その誤りと石川さんの無実をあらたに明らかにした齋藤・指紋鑑定士による三通の新鑑定については、ただ「独断に過ぎる」「一つの推測の域を出ない」というだけで、なんら内容にもふれずにしりぞけている。
 弁護団が異議審で提出した齋藤さんの新鑑定は、封筒表の「少時」が万年筆によって書かれたものであること、封筒宛名の被害者の父親の名前である「中田江さく」が犯行当日より以前に書かれたものであることを明らかにし、また、封筒に万年筆で書かれインク消しで消された抹消文字があることや脅迫状にも掻き消し文字があることを指摘した。さらに、判決の認定した条件で実験をおこない、脅迫状・封筒に石川さんの指紋がないことは自白が真実ではないことを示していることも明らかにしていたが、異議申立棄却決定は、「実験の条件設定が正確に再現できたか明確でない」というだけでしりぞけている。長年、警察鑑識で捜査にたずさわっていた齋藤鑑定人による科学的な分析にもとづいた、脅迫状作成者は石川さんではありえないという重大な指摘を東京高裁は鑑定人尋問もやらずに一方的に闇に葬ったのだ。審理はまったく尽くされていない。真実を闇に葬ることは許されない。最高裁はただちに再審棄却決定、異議申立棄却決定を取り消し、審理をやりなおさせるべきである。
 弁護団は石川一雄さんとともに、一月二十九日、特別抗告を申し立てた。特別抗告審の担当は最高裁第一小法廷の五人の裁判官である。証拠開示の要請も最高検に窓口が移った。積み上げると二~三メートルもあるという狭山事件の未開示の証拠がいまも検察庁に眠っているという事態は変わっていない。証拠隠しは不正義・不公平だという声をもっともっと大きくしなければならない。国会での追及、国連をふくむ国際世論への訴えの強化もすすめる。より大きな世論、幅広い市民の声で最高裁、最高検を突き動かす闘いにとりくもう。
 「真実は一つであり身の潔白が明かになるまで闘い抜く」と述べた石川さんのくやしさ、信念と決意を受けとめ、最高裁にたいする特別抗告審の闘いを全力ですすめよう。
 鑑定人の尋問もおこなわなずに弁護側の鑑定だけ否定する、検察官の手元に多数の未開示証拠がありながら開示請求を無視する、こうした「ルールなき再審手続」ともいうべき実態がこのままでいいはずはない。自由な裁量、自由心証の名のもとに裁判所の勝手が許されるはずはない。異議申立棄却決定に見られるいまの官僚司法をどう変えるのか、真に公正・公平な手続、人権擁護と正義実現という裁判の役割をどう実質化するのかという視点をもった闘いが問われている。

月刊狭山差別裁判題字

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