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<月刊「狭山差別裁判」341号/2002年5月>

事実調べ、証拠開示求める世論をさらに大きくしよう!
最高裁・特別抗告審闘争の勝利をめざして闘おう!

 先日、鹿児島地裁で大崎事件の再審開始決定が出された。大崎事件は一九七九年に鹿児島県大崎町で男性の死体が見つかった事件で、義姉が主犯、兄二人と甥が共犯として逮捕され有罪が確定、服役後の一九九五年に再審請求をおこなった再審事件である。鹿児島地裁の再審開始決定は、「疑わしきは被告人の利益に」の原則を再審請求手続きにも適用すべきとした最高裁第一小法廷の白鳥・財田川決定をふまえたものと評価できる。公判未提出証拠も再審請求における新証拠として総合判断の対象とした点も「無辜の救済」という再審の理念にのっとったものといえる。新証拠として最大のものは事故死の可能性を示す新鑑定であるが、捜査段階で遺体の解剖鑑定をおこなった鑑定人自身がその鑑定の不十分性を再審請求で認める補充鑑定をおこなったことが確定判決の殺害方法の認定をくつがえすことになったことが特徴であった。狭山事件で再審請求審で検察側の鑑定書を提出した石山鑑定人が、大崎事件でも検察側から意見書を提出したが、再審開始決定は弁護側の主張をいれて、確定判決の殺害方法の認定に合理的疑いが生じたと認めた。狭山事件と大きく違うのは、大崎事件の再審請求の審理では、殺害方法をめぐって鑑定人尋問がおこなわれているということだ。さらに、殺害などの自白と客観的状況の食い違いも指摘されているが、再審請求の審理中に現場検証もおこなわれたことの意味も大きい。わたしたちにとって、重要な教訓は、やはり事実調べの重要性である。
 また、大崎事件の再審請求では、検察側から供述調書などの証拠開示がおこなわれた。再審開始決定は、共犯とされた人たちの供述の信用性、それを裏付けるものとされた第三者の供述もしりぞけたが、関係者すべての供述調書が開示されたことの意味が大きいといえる。
 再審開始決定は、自白が誘導された疑いも指摘している。一九七九年段階でも取り調べに問題があったということである。捜査段階さらに公判段階をふくめて自白の存在に安易に依存して有罪を認定することの危険性を示している。あらためて刑事司法改革におけるえん罪の問題、誤判原因としての自白依存の危険性をじゅうぶん認識すべきである。
 証拠上の争いがあるならば再審公判で争うべきだという再三の抗告断念の声を無視して、検察側が福岡高裁宮崎支部に即時抗告をおこなったことはきわめて遺憾である。再審をめぐる情勢は決して楽観できない。四月には、名張事件の第六次再審請求の特別抗告を最高裁第一小法廷が棄却している。
 大崎事件の再審開始決定を真剣に受け止め、えん罪が多く現実に存在すること、えん罪がなぜひきおこされるのか、どうしたらえん罪をなくし、すみやかに誤判を救済することができるのか国民全体が考え、改革の道を司法関係者、法律家や政治家とともにさぐっていかなければならないはずだ。そのことこそ、司法改革で求められていることのはずだ。
 五月二十三日には、石川さんが不当逮捕されて三十九年をむかえる。えん罪四十年を許してはならない。東京での中央集会とあわせて各地で棄却批判の集会、学習会をひらこう。とくに事実調べ、証拠開示の必要性を強く訴えよう。また、再審請求における事実調べ、証拠開示の公正・公平なルール化を司法改革のなかで求めよう!えん罪・狭山事件三十九年を国際的にも訴えよう!

月刊狭山差別裁判題字

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