<月刊「狭山差別裁判」342号/2002年6月>

国連勧告、諸外国の証拠開示制度をふまえ
証拠開示の公正なルール化を求める世論を大きくしよう!

 異議申立棄却決定を受けて、民主党、社民党では棄却決定の問題点について弁護団や齋藤鑑定人から意見を聞くなどして、とくに証拠開示の必要性、ルール化について議論、検討をはじめている。民主党は「刑事訴訟法の改正に関するワーキングチーム」(座長 佐々木秀典・衆議院議員)をスタートさせ、司法改革ともあわせて具体的な証拠開示の公正な立法化の検討作業を開始している。
 とくに新証拠発見を理由とし、多くが事件から相当の年月がたっている再審請求では、検察官手持ち証拠に弁護側がアクセスできる(閲覧、利用できる)よう保障することは不可欠である。映画にもなったアメリカのハリケーン・カーターさんの再審無罪判決は、有罪判決に変更が生じたかもしれない重大な証拠(カーターさんではない真犯人を見たという当初の目撃証言)が警察によって隠されていたことを公正な手続きが侵害されたとして再審無罪の大きな根拠としている。再審において全証拠の開示は真実発見と誤判救済にとって不可欠なのである。イギリスでは、同じような証拠不開示による誤判が一九八〇年代に判明し、九〇年代に証拠開示を保障する制度が確立した。検察官は手持ち証拠のリストを弁護側に提示し、開示請求を受け、検察側は原則として開示義務があり、検察側が不開示を申し立てた場合は、裁判所がそれを判断するという手続きが確立している。日本でも、一九八〇年代にあいついだ再審無罪判決は、再審にとって証拠開示がいかに誤判救済、真実究明にとって不可欠かを経験的にも示した。現在進められている司法改革において、こうしたえん罪を教訓にした諸外国の証拠開示制度に学んだ証拠開示の公正なルール化が検討されるべきであろう。
 また、国連の国際人権自由権委員会が、一九九三年に日本政 府にたいして弁護側への証拠開示の保障を求め、それにもかかわらず改善が見られなかったことから、一九九八年にはさらに強く「弁護側が検察官手持ち証拠にアクセスできるよう法律および実務において保障すること」を勧告していることも忘れてはならない。日本政府は裁判所が開示命令を出すことができることをもって証拠開示が保障されていると主張してきたが、自由権規約委員会の委員が「弁護側が検察官がどんな証拠を持っているかわからないのでは個別証拠の開示命令を求めることはできないではないか」と指摘がなされているように、現状では弁護側に証拠へのアクセスを保障したことにならないことは明らかである。ことし十月に日本政府は第五回報告書を国連に提出し、来年には審査される予定である。具体的に狭山事件では、二〜三メートルの未開示証拠がありながら証拠開示がまったくおこなわれておらず、実務においても法律においても弁護側への証拠開示は何ら保障されていないという実態を早急に改善しなければならないはずだ。一九九八年に国連勧告が出された際に、平野龍一・東京大学名誉教授は、「国連の勧告をいつまでも放置するわけにはいかない」と述べた。司法制度改革の立法化作業とあわせて、刑事訴訟法ないし規則の改正によって、弁護側の権利として証拠開示の保障、検察官手持ち証拠のリストを弁護側に開示する義務を定めるなどのルール化を国会で議論し国民に開かれた場で具体的に検討すべきである。
 わたしたちも、異議申立棄却決定の不当性を学習し、批判を展開するとともに、証拠開示の公正なルール化を国会議員へ働きかけていこう!

月刊狭山差別裁判題字 

月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先
狭山中央闘争本部 東京都中央区入船1−7−1 03-6280-3360 fax 03-3551-6500
頒価 1部 300円