<月刊「狭山差別裁判」343号/2002年7月>

最高裁は再審の理念をふまえ事実調べ、証拠開示を保障し
狭山事件の再審を開始せよ!

 最高裁第一小法廷は、一九七六年の白鳥事件決定で、再審開始の要件となる「『無罪を言い渡すべき明らかな証拠』とは、確定判決における事実認定につき合理的疑いをいだかせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠をいうものと解すべき」であり、「明らかな証拠であるかどうかは、もし当の証拠が確定判決を下した裁判所の審理中に提出されていたとするならば、はたしてその確定判決においてなされていたような事実認定に到達したであろうかという観点から、当の証拠と他の全証拠と総合的に評価して判断すべきである」としている。そして、その判断にあたっては、「再審開始のためには確定判決における事実認定に合理的疑いを生ぜしめれば足りるという意味において『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判における鉄則が適用される」としている。この最高裁判例に示された再審の理念をふまえて、免田事件では、福岡高裁は現場検証や鑑定人尋問などの事実調べをおこない、一九七九年に棄却決定を取り消して再審を開始した。その後の多くの再審事件で事実調べがおこなわれ、再審が開始され誤判から無実の人が救済されたのである。また、その過程で裁判所が証拠開示命令をおこない、検察官手持ち証拠が開示され誤判救済に役立った。
 しかし、東京高裁の狭山事件第二次再審請求棄却決定、異議申立棄却決定はこの最高裁・白鳥決定やその後の再審判例で示された再審の理念にあきらかに反しているといわねばならない。たとえば、確定判決は脅迫状を証拠の主軸とし、埼玉県警鑑識課などの三つの筆跡鑑定が石川さんと脅迫状の筆跡を同筆としていることをあげる。そして、自白を根拠に、石川さんは当時あまり字を知らなかったが、家にあった雑誌『りぼん』から知らない漢字を拾い出して脅迫状を作成したと認定している。しかし、筆跡鑑定は寺尾判決自身が「経験と勘に頼るもの」といわざるをえないものであるし、字をあまり知らない人がわざわざ手本を見ながら脅迫状を書くのか、脅迫状や封筒に石川さんの指紋がないのはおかしいなど自白にも疑問がある。そもそも、寺尾判決の認定をささえる証拠は、警察の筆跡鑑定と不自然な自白という、きわめてあいまいな、弱い証拠であった。それに対して弁護団は再審請求で、警察の元文書鑑定主任ら専門家による多数の筆跡鑑定を提出、同筆とする三つの筆跡鑑定の誤りと異筆とする鑑定結果を明らかにした。また、封筒宛名の「少時」が万年筆で書かれていること、中田という被害者の名前が犯行日より前に書かれた疑いがあることなどを指摘した斎藤保・指紋鑑定士の鑑定を提出した。また、知らない漢字を活字を手本にして書けば筆勢が渋滞し脅迫状のようにスラスラ書けないなど自白を疑問視する専門家の指摘も出された。
 これだけの新証拠がもし確定判決のあげる証拠と同時に出されていたら、「石川さんが脅迫状を書いた」という確定判決の事実認定に変わりはなかったであろうか。それでも裁判所は「合理的疑い」を生ぜしめていないというのだろうか。いったい裁判所のいう「合理的疑い」とはなんなのか教えてもらいたいものである。最高裁はただちに再審を開始すべきでないのか。狭山弁護団は、六月二十五日に最高裁調査官と面会し、十月末に特別抗告申立補充書を提出することを伝えた。弁護団は補充書で再審棄却決定、異議申立棄却決定を批判し、両決定の取り消しと再審開始を求める。また、二〜三メートルにおよぶ検察官手持ちの証拠の開示、証拠リストの開示も最高裁に求める。最高裁は、再審の理念に基づいて事実調べ、証拠開示を保障し、狭山事件の再審を開始すべきである。

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