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<月刊「狭山差別裁判」344号/2002年8月>

証拠開示実現に全力をあげよう!
証拠開示の公正なルール化を求める広範な運動をおこそう!

 さる七月十日、狭山弁護団は東京高検の中山純一検事と面会し、証拠開示についての折衝をおこなった。弁護団は、最高裁に特別抗告を申し立てたあと、検察官の手元にある積み上げれば二〜三メートルにもおよぶ未開示の証拠資料について、証拠リストを開示するなどして、内容をまず明らかにすることなどを求める要請書を四月三十日付で提出し、最高検に折衝を求めていた。担当検察官は最高検の検事であるが、窓口として、東京高検の中山検事が弁護団との面会に応じるとして、この日の交渉となった。
 弁護側には検察官の手元にどのような証拠資料があるのかわからないのであるから、証拠リストの開示をおこなうなどして、手持ち証拠の内容をまず明らかにすべきだという弁護団の主張はしごく当然のことであろう。これまで、検察側は、個別に証拠を特定して開示請求すれば検討すると言ってきたのであるから何があるのか明らかにするべきである。そうでなければ検察側の主張は矛盾している。しかし交渉では、中山検事は証拠リストの開示には応じず、弁護側の強い要求にたいしては結局、最高検の担当検事と協議して回答するとだけ述べたというが、きわめて不誠実な姿勢といわねばならない。今後は最高検の検事みずから交渉に応じるなどして、早急に具体的に折衝をすすめるべきである。
 イギリスやアメリカなどでは、検察官が手持ち証拠のリストを作成し、それを弁護側に提示する義務があること、それにもとづいて弁護側が証拠開示請求を申し立てれば検察側は原則開示する義務があるというルールが確立していることを考えれば、こうしたルール化は日本においても急務である。
 日本政府は、一九九七年に国連に提出した国際人権規約にもとづく報告書では、弁護側の請求におうじて裁判所が個別証拠の開示命令を出すことができるから証拠開示の機会は保障されているという立場をとっているが、これにたいして、国際人権自由権規約委員会は一九九八年十一月、弁護側が証拠にアクセスできるよう実務および法律において保障するよう勧告している。そして、その審査に際して、委員会の委員から、弁護側が検察官がどのような証拠資料を持っているのかわからないのでは個別証拠を特定して開示請求することはできず、裁判所の開示命令ができるということで証拠開示を受ける機会を保障したことにならないと指摘がされている。証拠リストの開示義務を確立することがまず重要であろう。
 狭山事件のように、検察官が手元に多数の未開示証拠をもっていることが明らかでありながら、いっさい開示されないまま再審請求も棄却されるという事態は明らかに不正義・不公平であり、早急に是正されなければならない。
 中央本部では、弁護団とも意見交換し、狭山事件の証拠開示実現、証拠リスト開示にむけて全力をあげること、さらに、それとあわせて他のえん罪関係者や学者、文化人らもふくめて、証拠開示の公正なルール化を求める広範な運動をおこしていくことを確認した。国会での司法改革の議論とあわせて証拠開示の公正な立法化を求めて働きかけを強化する。これまでの再審事件における証拠開示の意義、証拠開示問題についての国連勧告や諸外国の制度、考えなどを学習し、日本における司法改革と結びつけて証拠開示実現を求めていこう。
 新証拠発見を開始の要件としている再審請求では証拠開示の保障はとくに必要不可欠なはずである。最高裁は、再審の理念にもとづいて事実調べ、証拠開示を保障すべきである。

月刊狭山差別裁判題字

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