<月刊「狭山差別裁判」345号/2002年9月>

再審請求から二十五年―一日も早く事実調べ・証拠開示最高裁は
再審の理念をふまえ事実調べ、証拠開示を保障し

 この八月で最高裁の上告棄却から二十五年が経過した。すなわち再審請求が四半世紀を経過したということである。くりかえし言わねばならないが、狭山事件の裁判では、一九七四年の二審・寺尾判決以来、事実調べがまったくおこなわれていない。すでに狭山事件は事件発生から四十年目にはいっている。石川さんは四十年近くも無実を叫んでいるのに、この二十八年間まったく証人尋問も現場検証もなされていないのである。その間にじつに数多くの新証拠が発見され、また専門家による鑑定書が弁護側から多数提出されているにもかかわらず、鑑定人尋問さえ一度もおこなわれていないのである。さらに、検察官の手元に積み上げれば二〜三メートルもの未開示証拠があることがわかっていながら、この十三年間証拠開示もおこなわれていない。このような裁判がいったい世界のどこにあるだろうか。
 映画『ザ・ハリケーン』 にもなり日本でも知られたアメリカの元プロボクサー、ルービン・カーターさんのえん罪事件は、再審が棄却されながらも無実を叫びつづけ、十九年目に終身刑が破棄され二十二年で無罪になった。無罪判決はカーターさんにたいする有罪判決を「理性ではなく人種差別、公開ではなく隠蔽」によるものして、カーターさんの無実を証明する証拠が隠されていたことをきびしく非難し、有罪判決を破棄している。
 同じく『父の祈りを』という映画で知られるギルフォード・フォー事件は、イギリスで一九七四年に四人の青年が爆弾事件で無実の罪を着せられたえん罪事件であるが、十四年の裁判で、警察がアリバイ証言を隠していたことが判明し無罪となった。
 カナダでは、一九七一年にネイティブ・カナディアンの青年が殺人犯にされたマーシャル事件がおきた。無期懲役判決を受けたドナルド・マーシャルさんは十二年の裁判で再審で無罪となった。政府は誤判調査委員会をつくり、当局による証拠隠しが誤判原因と判明した。カナダ最高裁は、一九九一年にこの誤判事件をとりあげ、「検察の手中にある捜査の結果は、有罪を確保するための検察の財産ではなく、正義がなされることを保障するために用いられる公共の財産である」という判決を出した。
 いずれも長い裁判になった重大な誤判として世界的に知られた事件であるが、重要なことは、諸外国では、これらの証拠不開示による誤判事件を教訓にして、弁護側に証拠開示を保障する制度、手続きを確立しているということである。イギリスでは、弁護側が利用するしないにかかわらず、検察官手持ち証拠の一覧を弁護側に示すというルールが定められた。この間、狭山事件で問題となっているように、日本では、検察側に手持ち証拠のリストの開示を義務づける規定はない。とくに再審請求では未開示証拠へのアクセスは不可欠である。イギリスでは、一九九六年に再審請求を審査する独立した委員会を設置し、この委員会に検察官などへ証拠開示命令できる強い権限を認め、弁護側が新証拠を収集できるよう保障している。
 最初にあげた狭山事件の裁判の実態は、こうした諸外国の誤判事件と比べても、あまりに不公平・不公正といわねばならない。弁護側の権利として適正な手続きの保障という意味で、検察官には証拠開示の義務があるというルールを確立することが日本においても急務である。さきにあげたカナダ最高裁判決は「『無実の人を処罰してはならない』ということを確実に保障することは弁護側の十分な答弁と防御の権利に依存しており、証拠の不開示はこの権利を侵害するものだ」と断じている。わが国の最高裁も、『無事の救済』という再審の理念に従って事実調べ、証拠開示を保障すべきである。

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