<月刊「狭山差別裁判」348号/2002年12月>

証拠隠しが人権侵害を生む!証拠開示のルール化を!
冤罪・誤判をなくすための刑事司法改革を!

 先日、神奈川県警戸部警察署で取り調べ中に自殺したとされていた男性が警察官による誤射による死亡であったと認定する判決が出た。判決は 「事件の証拠を消し去り、不公正な捜査をおこなった」と批判し、県警の組織的証拠隠しの可能性も指摘したと報じられている。名古屋刑務所等での法務省職員による暴行死傷事件でも証拠隠しがおこなわれていたと指摘されているが、このような権力による証拠隠しがまかりとっているからこそ公権力による人権侵害は跡を絶たないのではないだろうか。証拠隠しこそ人権侵害、不公正・不正義をひきおこすのである。その典型的な例がえん罪である。
 たとえば、狭山事件でも、取り調べ中の自白の信用性が争われているが、石川さんの取り調べがどうだったかという記録は何もあきらかにされていない。イギリスなどのように、取り調べに弁護士が立ち会い、録音・録画していれば、そして、すべての証拠を隠滅できないようリスト化しなければならず、開示する義務が法律化されていればこうした事態はある程度防止できよう。情報公開の時代である。警察の取り調べ、身柄勾留のありかた、証拠開示の抜本的な改革が必要だ。
 現在、政府の司法制度改革推進本部は、二〇〇四年にむけて司法改革の立法作業をすすめているが、そのなかには、裁判員制度導入や証拠開示拡充のルールなど、刑事司法にかかわる重要な論点もふくまれる。とくにこの論点を検討する「裁判員制度・刑事検討会」では証拠開示手続きの改革についての議論もはじめている。刑事手続きの改革の検討にあたっては、わが国では、これまで多くのえん罪事件、誤判事件がおきたことを教訓にしなければならない。とくに、えん罪が長期にわたる人権侵害であることを考えれば、えん罪をなくし、石川さんが求めるような誤判からの救済こそ迅速におこなわねばならないし、そのためにこそ、証拠開示の改善、改革が必要である。とくに、再審請求では全面証拠開示が保証されるべきであるし、少なくとも検察官手持ち証拠のリストを弁護側に公表し、何を持っているかを明らかにすべきである。そのような観点にたって、証拠開示の公正・公平なルール化を求める運動が法律学者、弁護士、文化人らによって始められている。各地においても、司法改革、裁判員制度に目をむけた学習会、証拠開示ルール化を求める運動をおこしていこう。
 検察、警察の不公正な証拠隠し、証拠不開示をやめさせられるかどうかは裁判所の姿勢の問題でもある。先日、弁護団が最高裁に提出した補充書は、証拠開示について、東京高裁が証拠開示命令、勧告をおこなわず、また、証拠標目の照会請求にも何ら応じないまま棄却決定をおこなったことは審理を尽くさなかった違法にあたると主張している。証拠開示が国際的な流れであり、国連の勧告も出されていることからしても、再審請求が新証拠発見を要件としていることからしても、弁護団の主張は当然のことである。東京高検には積み上げれば二〜三メートルという膨大な未開示証拠と証拠リストがあることが明らかになっているのである。弁護団は、今後最高裁にたいして、最高検へ証拠リストの開示を勧告するよう申し立てる。わたしたちも、事実調ベー再審開始とともに、証拠リスト開示勧告、命令を最高裁に強く求めていかなければならない。


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