<月刊「狭山差別裁判」349号/2003年1月>
最高裁は正義の実現を! 事実調べ、証拠開示を!
特別抗告審勝利の年にしよう!
二〇〇三年の幕開けとともに、不当な異議申立棄却決定にたいする特別抗告申立から一年が経過する。さる十月末に、弁護団は特別抗告申立補充書を提出し、十月、十一月には第一小法廷の三人の判事が交代したことから考えても、いよいよことしは特別抗告審が正念場をむかえるといわねばならない。弁護団の補充書は確定判決の各有罪証拠の疑問、棄却決定の誤りを明らかにしたうえで、自白の虚偽・架空性を詳細に分析し明らかにしている。東京高裁の高木決定、高橋決定が誤りであり、審理をまったく尽くしていないことは明らかである。最高裁は、無実の人を誤判から救済するという刑事裁判の理念にもとづいて、「疑わしきは被告人の利益に」「合理的疑いがあれば再審を開始する」という鉄則をつらぬかねばならない。そのためには、有罪証拠に生じている「合理的疑い」をごまかさず、ただちに事実調べ、とくに鑑定人尋問の機会を保証し、再審を開始すべきである。弁護団が多くの新証拠、新鑑定を提出し、これだけ多くの 「合理的疑い」を投げかけているにもかかわらず、二十八年以上も事実調べがないという事態はもはや許されない。
さらに、ことしは司法改革が国会をふくめて本格的に議論される年になる。政府の司法制度改革推進本部の「裁判員制度・刑事検討会」は、すでに昨年末の会議で証拠開示手続きについても協議しはじめている。推進本部が昨年秋におこなった刑事手続きの論点についての意見募集には三九三二件の意見が寄せられ、そのなかで「冤罪を防止する観点から弁護側が証拠開示を受ける権利をルール化すべき」との意見は二二六七通、また、「検察官が手持ち証拠のリスト、内容を弁護側に明らかにする義務を明記したルールを作るべき」とする意見も二一〇二通あった。司法改革で冤罪、誤判をなくす努力を求め、公平・公正な証拠開示のルールを確立すべきだという国民の声が大きいことを示している。昨年十二月には、「冤罪・誤判をなくすための公正・公平な証拠開示のルール化を求める会」が発足し、ことし幅広い運動を展開しようとしている。二〇〇三年は司法改革を国民的に議論しなければならない年である。何としても公正な証拠開示制度を実現しよう。
また、ことし政府は国連にたいして自由権規約にもとづく報告書を提出し、国際人権自由権規約委員会で審査されることになる。五年前の審査で日本政府は、弁護側が検察官手持ち証拠にアクセスできるよう実務および法律を改善するよう勧告を受けている。委員会の審査では狭山事件が名指しされ、証拠開示の保証はどうなっているのかと質問も出された。にもかかわらず狭山事件では、この五年間まったく証拠開示がなされないまま二度にわたって棄却決定が出されている。国連勧告はまったく無視され、証拠開示の改善は進んでいないのが現状だ。ことしは国際的にも冤罪・狭山事件と証拠開示、日本の司法の問題を誘えていく必要がある。
ことし五月には狭山事件発生、すなわち石川一雄さんが不当に冤罪におとしいれられて四十年をむかえる。わたしたちは、まず、冤罪・誤判の苦しみに石川さんを四十年もの間しばりつけていることを真剣に総括し、長期にわたる人権侵害を強いている司法の実態を考え、変えていく年にしなければならない。
昨年の異議申立嚢却決定から一年をむかえる一月二十三日から一カ月間を狭山闘争強化月間とし、各地で取り組みをすすめよう。補充書などの学習、原点にかえつた狭山事件の総学習を進め、石川さん無実の真実を徹底して広げ、特別抗告審勝利にむけて、最高裁に正義の実現をせまる年にしよう!
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