pagetop
 
 

 

<月刊「狭山差別裁判」354号/2003年6月>

証拠リスト開示の法制化を実現しよう!
証拠開示の公正なルール化を求める運動を展開しよう!

 五月二十三日、弁護団はこの四月から担当となった東京高検の青木検事と証拠開示の折衝をおこない、証拠リストを開示し手持ち証拠の内容を明らかにするよう求めたが、結局最高検と協議するということで終わった。検察庁の姿勢はきわめて不誠実、不当といわねばならない。同じように再審議求中の布川事件でも、検察官は証拠開示を拒否しつづけているという。長期 にわたり、えん罪に苦しみ誤判からの救済を求める弁護団はいずれも証拠開示の確立を強く求めているのである。
 五月二十七日、「えん罪・誤判をなくすための証拠開示の公正なルール化を求める会」(公正な証拠開示を求める会)は、「証拠開示法制要綱案」を公表し、司法制度改革推進本部にたいして要請をおこなった。「証拠開示法制要綱」はつぎのような証拠開示手続きを導入することを提起している。
 まず、警察官、検察官など捜査横関が収集した仝証拠を検察庁に必ず送り、検察官は、収集された証拠のリストを作成して、起訴とともに弁護側に交付することを義務づける。弁護側はその交付されたリストにもとづいて個別の証拠開示請求をおこない、検察官がおうじないときは裁判所に開示命令を申し立てることができるようにする。検察官は開示できない理由を具体的に明らかにし、裁判所は弁護人の意見も開いて、すみやかに決定をする。その際に、プライバシー侵害などの弊害を理由として不開示とすることはできないというものである。さらに、有罪無罪の判断にかかわる証拠が開示されていなかったことが判明したときは、公訴棄却または免訴の決定を裁判所は出さなければならないとする。警察や検察が都合の悪い証拠隠しをすることを許さないために、このような規定が必要であろう。佐伯千傍・立命館大学名誉教授が紹介されているが、アメリカではすでに一九六〇年代にジェンクス事件で国家機密を理由に検察官が証拠開示を拒んだ際に、合衆国最高裁は証拠開示しないなら公訴を棄却するという決定をおこなったという。アメリカでは被告に有利な可能性のある証拠を開示する義務が判例として早くから確立している。ハリケーン・カーターさんが再審で無罪になったのも、証拠開示ルールが確立し、その手続き違反が再審の理由に認められていたからであった。諸外国ではこうして警察・検察の証拠隠しを許さないルールが確立している。この法制要綱と同様の二段階の証拠開示手続きはイギリスの一九九六年の証拠開示法など前例があるし、合理的だ。
 公正な証拠開示を求める会の証拠開示法制要綱では、同様の証拠開示手続きを再審にも導入し、検察官は再審請求人に証拠リストを渡すこと、もし有罪無罪の判断にかかわる証拠が隠されていたことが判明した場合は再審開始決定をおこなうというルールを提案している。
 冤罪の教訓、再審事件の現状、国連の勧告、世界的な証拠開示の流れからしても、日本でも、この司法改革で早急に証拠開示の公正なルールを確立しなければならない。「検察官は正義がおこなわれることを見届ける義務があり、証拠を開示しないことで被告が防御のために証拠を利用することを奪うことは許されない」とした合衆国最高裁判決、「検察官の手中にある証拠は正義を実現するための公共財である」としたカナダ最高裁判決を日本の検察、最高裁、司法改革推進本部は受けとめるべきだ。


月刊狭山差別裁判題字

月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先
狭山中央闘争本部 東京都中央区入船1−7−1 TEL 03-6280-3360/FAX 03-3551-6500
頒価 1部 300円