<月刊「狭山差別裁判」357号/2003年9月>
原点にかえった総学習と証拠開示ルール化を柱に
特別抗告審闘争勝利をめざそう!
弁護団は、九月三十日に最高裁に特別抗告申立補充書を提出、永井調査官と面会する。弁護団は、「自白」に「合理的疑い」がないのかどうか、全証拠を総合的に評価し、微底して再吟味しなければならないことを最高裁に強く訴える。狭山事件では自白の核心のひとつである殺害方法について、確定判決(寺尾判決)が「やく殺」としていたものが、再審棄却決定ではタオ ルによる「絞殺」もあったかもしれないといい、異議申立棄却決定では着衣を介しての「絞殺」もあったかもしれないなどと確定判決の認定が変更されている。しかしこれでは、有罪判決に生じた疑問にたいして再審を開始するのではなく、事実調べもしないで一方的な裁判所の判断で有罪を維持しているだけだ。こうした棄却決定が再審の理念に反することは明らかだろう。弁護団は補充書で、異議申立棄却決定が依拠した検察官提出の石山鑑定の誤り、確定判決がよりどころにした五十嵐鑑定が証拠価値を失っていることを強く訴える。また、警察鑑識に長年従事してきた斎藤・指紋鑑定士による四通の鑑定についても棄却決定は中味についての判断をせずに、ただ「推測の域を出ない」とするだけでしりぞけている。有罪証拠の主軸とされた脅迫状の疑問を明らかにしている斎藤四鑑定の指摘を無視することは許されない。弁護団はさらに、万年筆など三物証の疑問、捜査の問題、筆跡・国語能力の問題などを中心に石川さんの無実を明らかにし、再審棄却決定、異議申立棄却決定を取り消して、再審を開始するよう最高裁に強くせまる。
くりかえし言ってきたように、補充書提出以降は最高裁がいつ決定をおこなってもおかしくない段階にはいる。特別抗告が二年をむかえる来年はまさに正念場と言わねばならない。
また、来年早々にはじまる通常国会には「裁判員制度」や「証拠開示ルール化」の法案が提出される予定である。政府の司法制度改革推進本部は法案の検討をすすめているが、えん罪・誤判をなくすという視点が見られない。国連の勧告もふまえた証拠開示の公正なルール化を実現するために、もっと世論を喚起する必要がある。逆にいえば、来年の国会は証拠開示立法化のチャンスである。そのために証拠開示の公正なルール化を求める世論をいま大きくしていくことが重要である。「公正な証拠開示を求める会」の「証拠開示法制要綱案」の法律化を求める署名を早急に集めきり、政府・司法制度改革推進本部に市民の声をつきつけよう。そして、衆議院解散・総選挙にあたっては、狭山事件をはじめとするえん罪・誤判をなくすための取り組み、証拠開示の公正なルール化をすすめることを候補者に要請しよう。狭山四〇年、証拠開示ルール化と結びつけて選挙闘争を闘うことも重要である。
さる六月には東北ではじめての狭山住民の会が青森県で結成された。この三カ月あまりで宮崎、福岡、大阪とあいついで住民の会が結成され、現在二十八都道府県、百十九団体になっている。狭山事件四十年の節目をふまえて住民の会結成や各地の集会開催も増えている。寺尾判決から二十九年をむかえる一〇・三一には、各地で集会や学習会の取り組みを展開してもらいたい。弁護団補充書の学習、狭山パンフ臨時号や写真パネルを活用した学習・教宣を各地ですすめ、最高裁、最高検へ事実調べ・再審開始、全証拠開示を求める要請ハガキを集中しよう。
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