<月刊「狭山差別裁判」358号/2003年10月>
正念場をむかえる特別抗告審闘争に勝利しよう
事実調ベ―再審開始を最高裁に強く求めよう
弁護団は、九月三十日に最高裁に特別抗告申立補充書、脅迫状を書いたのは石川さんではないことを立証する三つの新証拠、封筒記載文字のインクの元素分析を求める事実調べ請求書を最高裁に提出した。弁護団は永井敏雄調査官と面会し、新証拠が示す石川一雄さんの無実、事実調べの必要性、寺尾判決の誤りを説明し、再審の理念に反して、審理を尽くさなかった再審棄却決定、異議申立棄却決定を取り消し、再審を開始するよう強くせまった。
提出された新証拠のひとつである斎藤第五鑑定は、犯人の残した封筒に「2条線痕」がいくつも存在していることを明確にしたうえで、封筒上のその他の万年筆の痕跡と同様の「平行な二本の線」という特徴を示しており、万年筆で書かれた痕跡であることを明らかにしたものである。斎藤鑑定人は、封筒の『少時』の文字も指紋検出薬のニンヒドリンアセトン溶液にたいする反応から万年筆と鑑定している。また、「中田江さく」文字の水濡れによるにじみからこれを犯行当日以前に万年筆で書かれたものと鑑定している。すなわち、封筒上の万年筆の筆圧痕の存在は万年筆で書いて消すということをくりかえしている真犯人の犯行手順を示しており、これは石川一雄さんとはまったく結びつかない。石川さんの家には万年筆、ましてインク消しなど存在しないし、自白でも、すべて筆記用具はボールペンとなっている。寺尾判決は、被害者の万年筆を雑木林で盗って訂正筆記具に使ったと認定し、この矛盾をごまかそうとしたが、雑木林で犯行後に万年筆を盗ったという認定は自白から見ても、証拠から見ても絶対にありえない。封筒上の万年筆痕は確定判決の認定を完全にくずすものである。
斎藤第五鑑定は、裁判所で斎藤鑑定人自身が撮影した封筒の拡大写真を示しており、「2条線」の存在は誰が見ても否定できない事実である。東京高裁の異議申立棄却決定は、この万年筆による筆圧痕が封筒に存在することを無視して何も判断していない。長年警察鑑識に従事した専門家の鑑定結果をたやすく否定することは許されない。封筒上の万年筆痕は何を意味するのか、すくなくとも、鑑定人尋問をおこない、審理を尽くすべきであろう。今回、弁護団は封筒上のインクの元素分析をおこなうよう求める事実取調請求書も提出している。最新のⅩ線分析顕微鏡で簡単にかつ対象を破壊することなく、どのような元素がふくまれているかを分析できるのである。裁判所は、有罪判決の主軸となった脅迫状についてのこれら疑問について、調べもしないで、一方的に「推測の域を出ない」などと決めつけてしりぞけるのではなく、事実調べをすべきである。
この十月三十一日には寺尾判決から二十九年が経過するが、二十九年間事実調べはまったくおこなわれていない。おどろくべきことである。最高裁は、再審棄却決定、異議申立棄却決定を取り消して、斎藤5鑑定をはじめ、脅迫状を石川さんが書いたとすることに合理的疑いを投げかける弁護団提出の新証拠について事実調べをおこなうよう東京高裁に差し戻すべきである。
弁護側補充書提出を受けて、最高裁がいつ判断をおこなってもおかしくない状況にはいる。今後は、弁護団補充書、新証拠の学習を強化し、「斎藤鑑定人の鑑定人尋問をおこなえ」という事実調べを求める世論を大きくしていこう。
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