<月刊「狭山差別裁判」359号/2003年11月>

封筒・脅迫状の疑問、棄却決定の不当性はもはや否定できない
最高裁は事実調べをおこなうよう東京高裁に差し戻すべきだ!

 異議申立棄却決定は、『少時』が抹消された文字の上に書かれた改ざん文字であり、筆記用具は万年筆、抹消用具は万年筆インク消しであるとする斎藤第二鑑定の指摘は「一つの推測の域を出ない」としてしりぞけている。また、抹消文字の2条線の存在を明確にし、文字を判読した斎藤第3・柳田鑑定については、「独断に過ぎるというべき」としてしりぞけている。しかも、斎藤第一鑑定を 「にわかに与しがたい」としてしりぞけた再審棄却決定も異議申立棄却決定も斎藤さんの鑑定人尋問などの事実調べはまったくやっていない。
 弁護団がさる九月三十日に最高裁に提出した斎藤第五鑑定は、狭山事件で犯人の残した脅迫状の封筒にはっきりと存在する「2条線痕」が万年筆で書かれた痕跡であることを実験と分析によって明らかにした。封筒上に「2条線痕」すなわち犯行前に万年筆で書かれ消された筆圧痕が存在することは、犯人が万年筆および万年筆インク消しを持ち常用していたことを示しており、石川さんではありえないと弁護団は主張している。
 さらに、万年筆によって書かれた抹消文字の存在は、その上に書かれた「少時」が万年筆で書かれていることや、「中田江さく」が犯行前に万年筆で書かれているという斎藤鑑定人のこれまでの指摘をさらに補強する。自白の不自然さ、自白と客観的事実の食い違いからしても、被害者から当日奪った万年筆で封筒・脅迫状を訂正したという確定判決のストーリーも自白の信用性も完全にくずれているというべきであろう。
 弁護団は、十一月十二日、斎藤第五鑑定補遺と特別抗告申立補充書を最高裁に提出した。この斎藤鑑定人による第五鑑定補遺は、事件直後の埼玉県警鑑識課の筆跡鑑定に「封筒の『少時様』部分に抹消文字があり、赤外線写真等で検査した」という記載があることを報告するものである。この斎藤鑑定人の発見は重大である。斎藤鑑定が指摘するように、事件当時はまだボールペンインク消しはないことから、抹消文字は万年筆で書かれ、万年筆インク消しで消された痕跡であるということにならざるをえない。そして、第五鑑定で指摘されているように、この痕跡にはペン書きの特徴である「2条線痕」が見られるのである。抹消文字の存在は、犯人が犯行前に万年筆を傾用していることを示す痕跡である。
 事件直後に封筒現物を調べた埼玉県警鑑識課員二名が「封筒上に抹消文字が存在すること」を硯認しているのである。もはや「2条線痕」をともなう「抹消文字」すなわち「犯行前の万年筆使用痕跡」の存在を裁判所は無視できないはずだ。
 異議申立棄却決定が「推測の域を出ない」「独断に過ぎない」として一方的にしりぞけた斎藤鑑定の指摘と致する指摘が、四十年前に埼玉県警鑑識課員によってなされていたのである。「推測」「独断」とはいえないはずだ。事実調べもおこなわず、「抹消文字」「2条線痕」を無視した東京高裁が審理を尽くさずに棄却したことは明らかである。最高裁は、弁護団の指摘を受けとめ、真実究明を放棄し、著しく正義に反する棄却決定をただちに取り消して、東京高裁に事実調べをおこなうよう差し戻すべきである。
 斎藤鑑定人の鑑定人尋問、封筒のインク元素の]線分析などの事実調べを最高裁に強く求めていこう。


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