<月刊「狭山差別裁判」361号/2004年1月>

山上弁護士の遺志を受け継ぎ、特別抗告審に全力をあげよう!
通常国会で公正な証拠開示ルール化を実現しよう!

 正念場の年二〇〇四年がはじまった。年明け早々から始まる通常国会では司法改革関連の法案が審議される。裁判員制度導入と証拠開示手続きなど刑事裁判の充実・迅速化にかかわる法案の作成作業が現在すすめられている。どのような法案になるか、一、二月がヤマ場である。司法制度改革推進本部・検討会座長の試案が公表されているが、証拠開示制度については、問題点が多くきわめて不十分である。座長試案は、まず、弁護側に証拠開示請求する要件として、証拠を特定し、開示の重要性を明らかにするよう求めている。狭山事件で、検察側が証拠を特定して請求すれば検討すると言っているのと同じである。しかし、弁護側には、検察官の手元にどのような証拠があるのかわからないのであるから、このような要件を弁護側に課すことは証拠開示請求を実質的に不可能にすることは明らかだ。国連の規約人権委員会でも指摘されている問題点である。こうした不備・不公平を改善するために、証拠リストを弁護側に開示する制度が合理的で有効である。司法改革推進本部の当初の「たたき台」ではA案として、証拠リストを弁護側に交付する案が出されており、このA案をもとに検察や警察の証拠隠しを許さないような開示制度にするべきである。
 さらに、座長試案では、開示請求があった場合に、検察官が相当と認めるときに開示するとされており、開示不開示の判断が検察官にのみ委ねられており、ひじょうに一方的な制度になっている。このまま法案になったのでは、現状の改善・改革にはならないし、えん罪・誤判を防ぐものとはならない。狭山事件の実態を見れば、証拠不開示の制度化になる危険さえあるといわねばならない。今後は、公正な証拠開示の法制化を国会議員に強く訴えていく必要がある。
 三年目にはいる特別抗告審もことしは正念場である。
 昨年十二月十日に、狭山弁護団の山上益朗・主任弁護人が亡くなった。斎藤第五鑑定の「2条線痕」と自白の分析を軸に、最高裁に提出する補充書を最後まで執筆しつづけておられたという。「2条線痕」の意味、自白のおかしさ、万年筆のおかしさなど大キャンペーンを展開し、最高裁に事実調べをせまる闘いをもりあげるよう強く訴えておられたことを忘れてはならない。斎藤鑑定は、「少時」が万年筆で書かれていること、「中田江さく」文字が犯行前に万年筆で書かれていること、さらに、封筒上に「抹消文字」があり、「2条線痕」があることからも万年筆で以前に書かれ消された文字があることを明らかにした。しかも、抹消文字の存在は当時の埼玉県警の鑑定でも現認されている。これらは、脅迫状・封筒が石川さんとまったく結びつかないことを示し、万年筆と無縁であった石川さんと犯行の結びつきを断っている。さらに、犯行現場で被害者の万年筆を盗って、それで脅迫状・封筒を訂正したという確定判決の認定の誤り、ひいては万年筆を自宅へ持ち帰ったという自白にもとづく万年筆発見のおかしさとも結びつく。最高裁は、自白の信用性を全面的に見直し、棄却決定を取り消して、斎藤鑑定人の尋問など事実調べをおこなうよう東京高裁に差し戻すべきである。
 弁護団は、再度補充書を作成し、最高裁に提出し、事実調べを強く求めることにしている。わたしたちも総学習を強化し、「2条線痕」の存在と意義、自白のおかしさをもっと市民に広げ、最高裁に事実調べをせまる世論を大きくしなければならない。山上弁護士の遺志を受け継いで、何としても事実調べ−再審無罪を実現するよう全力で闘いを展開しよう。


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