<月刊「狭山差別裁判」363号/2004年3月> 山上弁護士の遺志を受け継いで 昨年十二月に亡くなられた山上弁護士の追悼集会が二月八日に大阪でひらかれ、全国の仲間が狭山闘争勝利を誓い合った。おおやけの場での最後の言葉となった本誌の昨年11月号掲載の松岡書記長との対談で、山上弁護士は、いま何を最高裁に訴え、再審をどうせまるのかを熱っぼく語られている。斎藤第5鑑定が焦点をあてた封筒上の「2条線痕」「抹消文字」の存在を山上弁護士は「アリバイに匹敵する無実の証拠」とも指摘した。「2条線痕」は脅迫状・封筒を作成した犯人が万年筆を犯行前から使用していたことを示しており、万年筆と無縁であった石川さんが犯人でありえないことを直接的に証明しているからである。斎藤鑑定人は、「2条線痕」「抹消文字」について、これまで斎藤第1、第2鑑定でも指摘したが、東京高裁の二つの棄却決定は、まったくこれにふれていない。事実調べもおこなわず、「独断に過ぎない」「推測の域を出ない」としてしりぞけている。しかし、斎藤第5鑑定補遺が明らかにしたように、封筒上に抹消文字があることは事件当時の埼玉県警鑑識課員も確認している。斎藤鑑定人の「推測」「独断」ではない。最高裁は、斎藤鑑定人の証人尋問などの事実調べをおこなうべきで、「2条線痕」についてまったく事実調べをおこなわなかった再審棄却決定、異議申立棄却決定を取り消し、差し戻せという弁護団の主張はしごく当然である。山上弁護士が指摘するように、斎藤鑑定人の一連の鑑定とくに「2条線痕」は、被害者の万年筆を犯行現場で奪い、それで脅迫状を訂正したという寺尾判決のストーリーが完全に崩壊したことを示している。さらに、その疑問は万年筆そのものの問題、カバンの問題へと広がり、石川さんの自白が真実ではないことを全面的に見直す必要があり、再審開始は不可避であるというのである。わたしたち一人ひとりが、補充書提出を受けて、山上弁護士の言葉を具体的に多くの市民に広げ、いまこそ最高裁にせまらなければならない。
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