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<月刊「狭山差別裁判」378号/2005年6月>

棄却決定の理不尽・不合理を具体的に暴こう!
工夫をこらし棄却批判の声をまきおこそう!

 最高裁による特別抗告棄却決定は、弁護団が提出した多くの新証拠を「不適法」としてしりぞけている。まず、第1次再審請求で出されたものは、同一の再審理由による再審請求を禁止した刑事訴訟法四四七条二項に照らして不適法であるとしている。しかし、これについては、加藤老事件の再審開始決定 (広島高裁・一九七六年) や免田事件の第六次再審請求の即時抗告審における再審開始決定 (福岡高裁・一九七九年) など多くの判例で、再審理由があるかどうかの判断は、出された新証拠と、確定判決で取り調べられた証拠および以前の再審請求で提出された証拠をあわせて総合的に判断しなければならないとされている。最高裁の棄却決定は、この定着していたはずの再審の考え方を逆行させるものであり、再審の理念に反する間違った判断方法である。以前の棄却決定の判断の 「安定性」を優先させるという姿勢があらわれている。
 棄却決定は、脅迫状と石川さんの書いた上申書などとの筆跡の違い、筆記能力の違いを「参考資料があったかどうか」の違いとしている。すなわち、石川さんの自白によれば、自宅にあった妹の漫画雑誌「りぽん」を手本にして漢字を拾い出して脅迫状を書いたというのである。筆跡の違いを抽象的な「書字条件」「心理」で説明するだけでは弱いと考えたすえの苦肉の策であろう。家宅捜索で石川さんの家には雑誌「りぽん」はなく、棄却決定の認定の根拠は自白だけであるが、脅迫状作成に関する自白が真実かどうかについての真剣な検討はまったくなされていない。棄却決定は自白全体を有機的に関連したものとして信用性を判断するということをしていない。この点も名張事件の再審開始決定との大きな違いである。
 弁護団は、「りぽん」を手本にしたとする自白が真実ではないことを明らかにする新証拠として、当時、石川さんの妹が雑誌「りぽん」の貸し借りをしていなかったことを示す妹および級友の供述調書を新証拠として提出していた。ところが、棄却決定は、これら妹および級友らの供述調書は第1次再審請求で出されたもので「不適法」であるとして、まったくふれていないのである。最高裁は都合の悪いものを 「不適法」として無視しているといわれてもしかたないであろう。
 棄却決定は、大野晋・学習院大学名誉教授による鑑定書など以前の再審請求で出された筆跡鑑定も「不適法」としてふれていない。弁護団は、同じ証拠だけを何度も出しているわけではない。第2次再審請求審であらたに9通の筆跡鑑定を出して、以前の筆跡鑑定と総合的に評価し、筆跡の形態、筆記能力、自白等あらゆる角度から石川さんが脅迫状を書いたとする認定に合理的疑いがあると主張しているのである。
 そして、弁護団がこれまでの筆跡鑑定をまとめて提出したときに、最高裁はすべての筆跡鑑定苦を8通ずつ提出してほしいと言ってきたのではなかったか。最初から不適法とするなら、なぜ提出させたのか理解に苦しむ。だまし討ちといわれてもしかたないであろう。
 このような最高裁による棄却決定の理不尽さ、不正義を徹底して批判する必要がある。多数の専門家の鑑定が出されているのに事実調べをせず、証拠開示も総合評価もせず、一方で自白の一部だけを根拠に脅迫状を書けたと決めつける棄却決定の不合理・不当性を具体的に暴いていかねばならない。さる5月24日の中央集会は、棄却決定に対する怒り、反撃の大きなエネルギー、運動の広がりが十分あることを示した。これをさらに拡大し第3次再審闘争を闘う体制を確立しよう。


月刊狭山差別裁判題字

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