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<月刊「狭山差別裁判」379号/2005年7月>

特別抗告棄却決定は「無実の人を誤判から救済する」
という再審の理念、これまでの再審判例に反する。

 最高裁による特別抗告棄却決定は、第1次再審請求で出された新証拠を「不適法」とするとともに、異議申立審や特別抗告審で提出した新証拠も「再審請求審の決定の当否を事後的に審査する異議審の性格にかんがみ、不適法」としている。「証拠価値について付言する」として触れている新証拠もあるが、「不適法」としたうえで、証拠価値を認める方向に評価するとは思えない。実際に、弁護側の新証拠を個々バラバラにとりあげ、まったく事実調べもせず、ズサンで誤った証拠評価をしているし、まったく触れていない新証拠もある。弘前事件では、再審請求春で真犯人が名乗り出るなど新証拠が出されたが、仙台高裁は請求を棄却、それに対する異議申立の審理で、仙台高裁はあらためて証人尋問、鑑定人尋問をおこない、棄却決定を取り消して、再審開始決定をおこなっている。また、免田事件の第六次再審請求の即時抗告審でも福岡高裁は、「本件再審請求の理由の存否に関連して、原審(請求審)及び当審(即時抗告審)に提出されたすべての証拠を検討し」たうえで、再審棄却決定を取り消して再審開始決定を出している。異議審や即時抗告審で再審開始決定が出されているということは、新旧の全証拠を総合評価して、棄却決定の当否を判断するとともに、再審理由があるかどうかの判断をしているということであろう。これらと比べて、今回の最高裁棄却決定が、「事後的に決定の当否を判断する」のだから再審理由として新証拠を出しても不適法だというのは、あまりに形式的で、原決定(再審棄却決定)を前提として限定的に証拠評価し判断するべきだという姿勢をとっているとしか思えない。事後審査審で出された新証拠は再審理由として考慮しなくていいということになれば、再審請求が棄却された後になって、真犯人が判明した場合や、証拠開示によって、新事実が判明した場合など、確定判決の有罪認定を揺るがすような新証拠が発見・提出されても、再審棄却決定の当否を事後的に判断する異議審や特別抗告審では再審理由にはならないことになってしまうのではないか。たとえ、事後審査春で重大な新事実が発見されても、再審請求審で再審理由にあたる新証拠が出されていないということで棄却されてしまうことになってしまうのではないか。これは不合理だし、「無実の人を誤判から救済する」という再審の理念に反する。新証拠によって確定判決の認定に合理的疑いが生じていると判断すれば、みずから再審開始決定を出せばよいはずである。事後審査審であれ、誤判救済に努めるべきであり、最高裁棄却決定は再審の門を狭める、きわめて問題のある判断方法ではないか。弘前事件、免田事件の再審開始決定のように、すべての証拠を総合的に評価し、すくなくとも事実調べをおこなうべきである。ところが、最高裁の棄却決定は、事実調べをまったくしないばかりか、一方的な「証拠調べ」をしている。たとえば、「肉眼で観察したところでは別異の筆記用具であるとは認めがたい」として、封筒の「少時」部分が万年筆で書かれたと指摘した元鑑識課員である斎藤保・指紋鑑定士の鑑定書をしりぞけている。「2条線痕」についても、「封筒の実物を観察しても判然としない」としている。筆跡・筆記能力についての鑑定書にたいしても、鑑定人尋問もせず、勝手に証拠物を調べて独自の見解を述べている。このような「密室の証拠調べ」ともいうべきやりかたは明らかに不公平・不公正であり、許されない。弁護側から出された証拠の価値を判断し、しかも、あらたな認定をするのであれば、事実調べは不可欠であるはずである。弁護側の反論や説明の機会も与えず、証拠価値を否定することは不当である。第3次再審では、裁判所は必ず事実調べをおこなわなければならない。


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