<月刊「狭山差別裁判」387号/2006年3月>
第3次再審で事実調べ、証拠開示をかちとろう!
裁判所は鴨居の現場検証を実施し、万年筆の疑問に答えよ!
最高裁による特別抗告棄却決定は、事件後2カ月近くたってから万年筆が発見された石川さん宅のカモイについて、「視点の位置や明るさによっては見えにくい」とか「さっと見ただけでは万年筆の存在がわからない場所」などとして、2回の家宅捜索では鴨居上の万年筆を見落としたと認定している。
しかし、これほど常識的におかしな話はないであろう。石川さん宅はお勝手をふくめて5部屋だし、鴨居は高さが75.9cm、奥行き8.5cmしかない。警察のマニュアルでも捜索は一定の方向を決めて見落としのないようにおこなうとされている。捜索では、暗いところも明るくして探すのは当然だし、石川さんの家のお勝手には天窓があり、夜明けからおこなわれた捜索時には光が入ってきてどんどん明るくなっているはずだ。また、警察が逮捕した被疑者の家の捜索を「さっと見て」終わるわけがないであろう。現に2回の捜索とも2時間以上かけている。
今回、弁護団は第3次再審請求で、警察に長年勤務し、警察学校の教官なども勤め、捜索の経験も豊富な元ベテラン警察官の報告書を新証拠として提出する。この報告書では、警察の家宅捜索で基本的に注意される点をふまえて、狭山事件における2回の家宅捜索を分析している。人員や配置など十分な体制で捜索がおこなわれていること、脚立や台を使用し、神棚を調べていることなどから、高い所も見逃さずに調べていることが明らかであり、鴨居を見落とすようなことは考えられないとしている。最高裁の棄却決定がいかに捜索の実態を無視し、鴨居を見落としたという認定をしているか明らかである。
万年筆が発見・押収された第3回捜索の不自然さもある。わざわざ、万年筆を石川さんの兄の六造さんに素手で取らせていることや、発見場所の写真が調書に添付されていないこともおかしい。六造さんに手で取らせたところの写真を撮り、その後、万年筆は用意していたビニール袋に入れて持ち帰ったというのである。
石川六造さんは、第2回目の捜索のときに、刑事たちがカモイのネズミ穴を調べていたことを1966年の第16回公判で証言している。寺尾判決は、この六造さんの証言を一方的に信用できないと決めつけて否定したが、第2次再審請求で、捜索責任者であった小島警部は、捜索のときに、ポロがつめてあったふし穴を「こういうところを調べないとダメだ」と部下に言って調べさせたと弁護団にたいして証言した。さらに、第1回目の捜索にかかわった元刑事からは、はっきりとお勝手のカモイに手を入れて調べたという証言も明らかになった。
石川さん宅から押収された万年筆は、中のインクが被害者が使用していたライトブルーではなくブルーブラックであったことや、被害者の指紋も石川さんの指紋も検出されていないという疑問もある。しかし、最高裁の棄却決定も「異なるインクが補充された可能性もないわけではない」などとごまかして、審理を尽くさなかった。万年筆の発見が石川さんの自白が信用できることを裏付けるとはとうてい言えない。
第2次再審では、カモイの現場検証もおこなわず、元刑事の新証言や鴨居の識別に関わる鑑定などの新証拠と六造さんの証言などの旧証拠を総合的に評価・検討することなく、弁護側の主張がしりぞけられている。弁護団が、ズサンで不当な判断と非難するのも当然である。
弁護団は5月23日に万年筆に関する新証拠などを提出し、第3次再審請求を東京高裁に申し立てるが、最大の課題は事実調べである。第3次再審請求では、事実調べ・証拠開示をおこない、万年筆の疑問に答え、自白の不自然さを全面的に再検討するよう裁判所に強く求めたい。
月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先
狭山中央闘争本部 東京都中央区入船1−7−1
TEL 03-6280-3360/FAX 03-3551-6500
頒価 1部 300円
|