<月刊「狭山差別裁判」392号/2006年8月>

第3次再審請求は狭山事件の数多くの疑問を明らかにしている
東京高裁は事実調べと証拠開示を保障せよ!

 狭山事件の第3次再審請求書は、確定判決となっている2審・東京高裁の寺尾判決があげた有罪証拠の一つひとつについて再検討・反論をくわえ、新証拠とこれまでの全証拠を総合的に見れば有罪判決に合理的疑いが生じていることを明らかにし
ている。
 寺尾判決は、石川さんと犯行を結びつける客観的証拠として、脅迫状の筆跡と石川さんの筆跡の一致、現場足跡と石川さん宅の地下足袋との一致、スコップ、目撃証言、犯人の声と石川さんの声が似ているとする音声証言などをあげている。
 さらに、被害者の万年筆、鞄、腕時計が石川さんの目白通り発見されたことをあげて、石川さんの自白は信用できるとして、犯人であることに疑いはないとしている。そのうえで、殺害や死体処理など犯行の態様についての詳細な自白があるとして有罪の認定をおこなっているのである。
 しかし、この寺尾判決の有罪認定にはそもそも問題がある。まず、客観的証拠によって犯行との結びつきが認定できるとしながら実際には自白に依存しているということだ。たとえば、石川さんが脅迫状を書いたということについても「自宅にあった『りぽん』を見ながら書いた」という自白を引用して、知らない漢字も書けたと認定している。そして、客観的証拠があり、自白に秘密の暴露がある(犯人しか知らないことが自白にふくまれる)として、自白内容に不自然・不合理な点がないか、自白が物的証拠と矛盾しないかを十分に検討していないのである。
 たとえば、2審でおこなわれた鑑定の結果、脅迫状・封筒の訂正箇所の筆記用具が万年筆であることが判明した。犯行現場でボールペンで訂正したという石川さんの自白が客観的事実と食い違っていることが明らかになったのである。ところが、寺尾判決は、石川さんが被害者から奪った万年筆で訂正したと認定し、だとすれば万年筆を奪った場所・時期について嘘をついたことになると判示した。有罪認定を前提にし、自白と客観的事実に食い違いがあるのは、石川さんの自白に嘘が混じっているからであり、それに気付かなかったのは捜査が拙劣だったからだとごまかしているのである。第2次再審の特別抗告棄却決定も同様に随所で自白を引用して有罪認定を維持している。
 第3次再審請求書は、こうした狭山事件の確定判決や再審棄却決定の問題点を明らかにしたうえで、筆跡・足跡等の客観的証拠とされたものに証拠価値はなく、石川さんと犯行を結びつけるものではないこと、万年筆等の発見経過には疑問があり、秘密の暴露があるとはいえないこと、自白には多くの矛盾・不自然さがあり、自白の全面的な再検討が必要であると主張する。そして、「無実の人を誤判から救済する」という再審制度の理念と「再審請求人の意見を充分酌んだ上で再審請求理由の有無を判断することが望ましい」(松山事件・仙台高裁決定)とした判例をふまえ、事実調べと証拠開示が不可欠であると訴えている。
 裁判所は人権擁護の最後の砦とされる。公正・公平な審理がおこなわれることを市民は信じているからこそ、司法に対する信頼は成り立っているはずである。多数の専門家による鑑定書、元刑専らの重要な新証言、不自然・不合理な自白内容など狭山事件には多くの疑問がある。だからこそ、多くの学者、文化人、ジャーナリストが事実調べと再審開始を求めているのである。それにもかかわらず、確定判決以来32年も事実調べがおこなわれていないことこそ司法への信頼を失うものであろう。狭山弁護団の主張は当然であり、だれもが支持できるものである。
 東京高裁が、狭山弁護団の提出した新証拠、第3次再審請求書の主張を受けとめ、鑑定人尋問・現場検証などの事実調べをおこない、一日も早く再審を開始するよう強く求めたい。


月刊狭山差別裁判題字 

月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先
狭山中央闘争本部 東京都中央区入船1−7−1 03-6280-3360 fax 03-3551-6500
頒価 1部 300円