<月刊「狭山差別裁判」400号/2007年4月>

誤判救済のための再審制度の充実を!
事実調べ、証拠開示の保障、自白の厳密な判断を!

 狭山事件では2審判決以来33年以上も事実調べがおこなわれていない。弁護団は、殺害方法や死体処理、犯行現場あるいは脅迫状作成など自白内容の根幹にかかわって、自白と事実が食い違っていることを示す鑑定書や証言を新証拠として提出しているにもかかわらず30年以上におよぶ再審請求で一度も事実調べがおこなわれていないのである。とくに、再審請求においては専門家による鑑定書が新証拠として提出され、争点となることが多いのであるから、鑑定人尋問は不吋欠である。しかも、狭山事件のように事実調べもしないまま確定判決の認定内容を変更して有罪を維持するような棄却決定は許されないであろう。
  この間、志布志事件、富山・氷見事件、佐賀・北方事件など、あいついで無罪判決が出され、えん罪がいまもあることが明らかになった。とくに氷見事件を見てもわかるように、誤判から無実の人を救済するという再審制度、再審請求手続きを充実させることも重要である。1980年代にあいついで再審で死刑囚の無実が判明したことを忘れてはならない。最初に死刑囚として再審無罪となった免田栄さんの場合も、検察官手持ち証拠
リストの開示、それにもと、づく重要証拠の開示による新事実の判明、現場検証や法医学者の鑑定人尋問などの事実調べが真実発見、長期にわたる誤判、人権侵害からの救済のカギになった。
  再審については、刑訴法四三五条に再審開始の要件についての規定があるだけである。刑訴法四四五条に「必要があるときは事実の取調」ができるという規定があり、新証拠が出され、客観的に必要性が認められるときは、事実調べは義務と考えるべきだと日弁連や法学者は指摘する。しかし、現実には裁判所の悪意的な判断によって狭山事件や袴田事件のように、事実調べが十分におこなわれず再審が棄却されている。
  また、これまでの再審無罪事例や再審の理念からすれば、とくに事件後長い年月を経ていることが多い再審請求においては、検察官手持ちの公判未提出証拠の開示が必要不可欠である。しかし、狭山事件をはじめとして、再審請求において弁護側への証拠開示は十分におこなわれているとはいえない。国連からも証拠開示の保障を勧告されており、イギリスで実施されているような証拠リスト開示や検察官手持ち証拠の原則全面開示は国際的には当然とされている。
  再審請求における事実調べ、証拠開示の保障は必要不可欠であり、実務の改善とともに、制度改革を求めたい。
  狭山事件、袴田事件、名張事件などの再審請求における棄却決定を見ると、裁判所が、安易に自白に依存しているように見える。狭山事件の棄却決定では、弁護側が自白と客観的事実の食い違いを新証拠で指摘すると、その部分だけ虚偽の供述だと認定している。自白の信用性を総合的に評価するのではなく、自白の一部をつまみ食い的に根拠にして、有罪判決の疑問をごまかしているのである。これも自白依存の表れである。
  この間のえん罪がいずれも虚偽自白によってひきおこされ、氷見事件では裁判所もそれを鵜呑みにして有罪判決を出していた。志布志事件など人権無視の取り調べが明らかになったことを受けて、取り調べの可視化、自白にかかわる証拠開示の必要性も指摘されている。裁判所は、狭山事件をはじめ、自白が真実か否かが争われている多くの再審請求においても、新旧証拠を総合的に見直して、自白の信用性を厳密に判断すべきである。
  狭山事件は事件後45年を迎えようとしている。袴田事件で袴田巌さんが囚われの身になって42年、名張事件47年、帝銀事件は60年にもなろうとしている。これだけ長期にわたって無実を叫びつづけ、世論も再審を支持しているのである。これ以上、かたくなに司法が再審を拒みつづけることは許されない。


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