<月刊「狭山差別裁判」410号/2009年05月>

足利事件の教訓をいかせ! 誤判原因の徹底した究明を!
すべての再審における事実調べ、証拠開示が必要だ!

 誤判がまた明らかになった。さる6月4日、足利事件で無実を訴え再審請求中の菅家利和さんが収監先の千葉刑務所から釈放された。菅家さんは、1990年に栃木県足利市でおきた幼女殺害事件の犯人として有罪判決を受け、2000年に最高裁が上告を棄却、無期懲役刑が確定し、再審を求めていた。弁護団は12年前から有罪証拠となったDNA鑑定に疑問があるとして再鑑定を裁判所に求めていたが、再審請求の即時抗告審で東京高裁第1刑事部(田中康郎裁判長)が昨年12月、やっとDNA再鑑定をおこなうことを決定し、弁護側、検察側が推薦した2人の鑑定人が被害者の下着付着の体液と菅家さん本人の血液等を資料として鑑定を実施したところ、両鑑定ともに、犯人のDNA型と菅家さんのDNA型は一致しないという鑑定結果が出た。これを受けて検察官は再審を認める意見書を東京高裁に提出するとともに、刑の執行を停止し釈放したのである。
  問題は有罪証拠となった科学警察研究所のDNA鑑定が間違っていたという点にとどまらない。1審の宇都宮地裁(久保眞人裁判長)は、科学警察研究所のDNA鑑定と自白をおもな根拠として菅家さんを犯人と決めつけた。2審・東京高裁(高木俊夫裁判長)も、「事情聴取の初日に早くも自白し……犯人であればこそ述べ得るような事柄について……具体的に詳細な供述をした」として有罪としている。その自白が虚偽であったことが明らかになったのである。さる6月23日に東京高裁(矢村宏裁判長)がおこなった再審開始決定は、「捜査段階および公判延での自白の信用性に疑問を抱かせる」としている。警察の
取り調べでウソの自白が強要され、それが公判廷でも維持されたという事実を見過ごしてはならない。控訴審以降の弁護団が、殺害態様の自白が遺体の状況と矛盾することなど自白の疑問を主張したにもかかわらず、十分に調べられずに、自白に依存して裁判所が誤った有罪判決を出しつづけたという問題を総括しなければならない。しかも、12年も前からDNA再鑑定を一貫して求めていたにもかかわらず、最高裁も宇都宮地裁もおこなわなかった。それによって、無実の菅家さんに17年半もの獄中生活を余儀なくさせたのだ。重大な人権侵害をひきおこした警察、検察の捜査・取り調べのありかたはいうにおよばず、十分な審理をおこなわなかった裁判所もふくめた真剣な反省が必要である。釈放後の会見で、菅家さんが「間違ったではすまない」と強く語ったことを真剣に受けとめるべきである。
  氷見事件、足利事件の教訓として、裁判所は、DNA鑑定だけでなく、警察の鑑定だからと安易に過信せず、再鑑定や鑑定人尋問などの事実調べをおこない、警察の鑑定や自白の信用性を公正、厳密に評価するべきである。疑問があれば、証拠を開示して、調べ直すのは当然である。さらに、菅家さんや柳原さ
んの話を聞けば、取り調べの全過程の可視化が必要不可欠であることは明らかである。志布志、氷見、足利の教訓をふまえ、可視化、証拠開示をはじめとする司法民主化の闘いと狭山第3次再審の闘いをおしすすめよう!


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