<月刊「狭山差別裁判」424号/2010年07月>
布川事件の教訓を活かし、証拠開示の法制化を実現しよう!
東京高裁は証拠開示と事実調べを保障せよ!
狭山弁護団は、2011年2月24日付けの開示勧告申立書で、有罪証拠のひとつとされたスコップの指紋検査の報告書の証拠開示を求めた。スコップは事件当時の5月11日に発見され、死体を埋めるのに使われたものと発表された。発見直後の新聞報道では、捜査本部がスコップの指紋を調べていると書かれているが、犯人に直接結びつく重要な証拠であるから指紋検査がただちにおこなわれたはずである。
スコップは、石川さんがつとめていた養豚場のものであるとして、被差別部落への見込み捜査を合理化するものとされ、確定判決でも有罪証拠の一つとされた。それに対して弁護団は、スコップ付着土壌が死体発見現場付近の土と一致していないとする科学者の鑑定を出しており証拠価値はないと主張、再審の重要な争点である。検察庁はスコップの指紋検査報告書をすみやかに開示すべきである。
また、弁護団は、5月18日付けの証拠開示勧告申立で、事件当日、被害者宅の物置に戻されていた被害者の自転車の指紋検査報告書の開示も求めている。自白や確定判決では、犯行現場からこの自転車に乗って脅迫状を被害者宅に届けたとされ、判決は「指紋検出につとめた」と認定し、当時の鑑識課員も指紋検査がおこなわれたと弁護人に述べている。これも犯人が残したもののひとつであり、指紋検査がおこなわれたはずである。
弁護団は、被害者宅の近くに住む男性が、事件当日、家の所在をたずねた男は石川さんだとする目撃証言は信用できないとする心理学者の鑑定を提出している。自白では、脅迫状を届ける途中で被害者の家の所在をたずねたとなっているが、偶然出会った何の面識もない高校生を誘拐し、家の場所がわからないので、近くまで行って近所の家で聞いたという自白や有罪判決こそが不自然極まりない。自転車の指紋検査結果を開示し、これら自白や目撃証言の疑問について再検討するべきである。
先日、再審無罪が確定した布川事件では、取調べ録音テープ や目撃証言など開示された証拠が再審開始の大きなカギとなった。狭山事件でも、徹底した証拠開示と事実調べが必要である。
しかし、7月におこなわれた第7回三者協議で、東京高検の検察官は弁護団の求めた証拠開示の必要性はないという意見書を提出し、証拠開示に応じなかった。検察官の証拠開示に応じようとしない姿勢はきわめて不誠実で問題である。弁護団は、証拠の存在する根拠とともに、開示の必要性、新証拠との関連性を示して、証拠開示を請求している。検察官は、証拠開示の必要性はないとする意見書を2009年10月末にも提出したが、東京高裁は同年12月に、検察官に8項目にわたる開示勧告をおこなっているのである。
弁護団は、9月に予定されている次回の三者協議にむけて、検察官にたいする反論を提出し、証拠開示を強く求めていくことにしている。検察官が、裁判所の開示勧告の趣旨にしたがい、弁護団の証拠開示請求に誠実、公正にこたえるよう強く求めたい。
狭山事件における証拠開示を求めるとともに、検察官が校正・公平に証拠開示に応じることを義務づける法律の制定を政府、国会に求める請願署名運動を幅広く進めよう!
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